終活で口座整理をする手順と注意点

生前対策

終活で口座整理をする手順と注意点・解約の判断基準も解説

終活を始めようと考えている方の中には、銀行口座をどうするべきかお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その時々の都合で開設した銀行口座が複数あり、それぞれにいくら入っているか把握していないという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、複数の銀行口座に資金を分散させておくことは、相続の際にトラブルになる可能性もあるため、銀行口座は生前に整理しておいた方が良いでしょう。

今回は、生前に銀行口座の整理が必要な理由、銀行口座の整理を始めるタイミング、解約するか否かの判断基準、家族に資金管理を任せる方法、銀行口座の整理を進める上での注意点などについて説明します。

1.生前に銀行口座の整理が必要な理由

なぜ生前に銀行口座の整理をした方が良いのか、その理由について具体的に説明します。

(1)相続手続きに備えるため

預貯金を相続する際には、金融機関ごとに個別に手続きを行わなければいけません。
郵送で相続の手続きが可能な金融機関もありますが、中には支店まで直接出向かなければ手続きができない金融機関もあるようです。銀行の窓口の営業時間は一般的に平日の9時から3時までなので、相続人が会社員であれば、手続きのために平日に休暇を取らなければならない可能性があります。
銀行口座の数が多いほど相続の際に相続人の負担となることが想定されるので、銀行口座はあまりたくさん所持していない方が良いでしょう。

(2)休眠口座にしないため

2018年1月に休眠預金等活用法(民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律)が施行されたことにより、10年以上取引が行われない口座は休眠口座とされ、その預金は民間での公益的な活動の資金として活用されます。
休眠口座になっても預金が失われるわけではなく、手続きを行うことでお金を引き出すことは可能です。ただ、休眠口座になってしまうとATMで下ろすことができず、本人確認書類を持って窓口に出向かなければいけなくなる等、手間がかかる可能性があります。10年近く放置している口座をお持ちの方は、できる限り早期に解約するなど対処しておいた方が良いでしょう。

持ち主が亡くなった後、相続手続きが行われなかった銀行口座が休眠口座となるケースは珍しくありません。
通帳やキャッシュカードが紛失などにより失われている場合や、ネットバンクでそもそも通帳がないという場合などは、一覧などを用意していない限り、相続人が口座の存在に気付かずに手続きをしないケースもあるでしょう。また、口座の存在に気付いてはいたものの残高が少額であった場合など、手続きが面倒で放置してしまうというケースもあり得ます。
亡くなった後、10年以上経ってから故人の口座が発見された場合でも相続手続きを行うことは可能です。ただし、金額によっては、相続税の課税対象となるケースもあります。また、既に相続放棄をしている場合などでは、トラブルに発展する可能性もあります。

(3)口座維持手数料が導入される可能性

今までは銀行に預けているだけならば、長期間に渡り放置していても、利子が付いて増えることはあっても、お金がかかることはありませんでした。しかし、現在は、多くの銀行で口座維持手数料の導入が検討されています。
どのようなルールで運用されるかはまだわかりませんが、口座を持っているだけでお金がかかることになる可能性があります。

2.銀行口座の整理を始めるタイミング

基本的に使用頻度の低い銀行口座の場合、所有しているメリットはほとんどなく、休眠口座になる可能性や、今後口座維持手数料が発生する可能性があるなど、デメリットの方が多いです。無駄な費用や手間をかけないためにも、使用頻度の低い銀行口座は、早めに解約しておいた方が良いでしょう。

ただし、しばらく使用していない口座の場合、通帳やカード、登録印を紛失してしまっているかもしれません。通帳や登録印を紛失した場合は、一般的に解約手続きの前に紛失手続を行う必要があります。こうした手続きにはある程度の時間と手間がかかりますので、時間と気持ちの余裕がある時に行うことをおすすめします。

3.銀行口座の情報を整理

銀行口座の整理を行う際には、まず口座情報を整理することから始めましょう。

(1)所有口座とその使用状況を確認する

自分が所有している銀行口座と、その銀行口座の使用状況を確認しましょう。
通帳などの取引明細から、クレジットカードや公共料金の引き落とし口座となっていないか、配当や年金などの受取り口座になっていないかなどを確認するとよいでしょう。使用頻度が低い口座が引き落としや受取りの口座となっている場合は、普段使用している口座に変更した方が良いかもしれません。

(2)一覧を作成する

使用状況の確認が完了したら、自分が所有する銀行口座の一覧を作成しておくことをおすすめします。一覧には、その口座の主な使用目的も記載しておくとよいでしょう。
エンディングノートを作る場合、金融機関の情報を書く欄があることが多いので、そちらに記載するのもおすすめです。
この一覧は、万一の時に家族などが見つけやすい場所に置く必要があります。あらかじめ存在について知らせておくか、貴重品などと一緒にまとめておけば見つけやすいかもしれません。

4.解約するか否かの判断基準

銀行口座を解約するか否かの判断基準が難しいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的には数年間使用していない口座は解約してもよいかと思います。
使用頻度が低いけれど口座は残しておきたいという場合は、定期的にチェックして資金を動かしてみるなど、休眠口座として扱われないように注意を払うようにしましょう。
支店が遠いために使用しにくい場合、最近はほとんどの銀行がネットバンクに対応していますので、ネットバンクの手続きを行うという方法もあります。

5.家族に資金管理を任せたい場合

高齢になると認知症まで行かなくとも、判断能力の衰えや健康上の問題などから自分で金融機関に出向くことや資金の管理が難しくなるケースもあります。自分で資金の管理が難しい場合、家族に管理を任せたいと考える方もいらっしゃるかもしれません。その場合は、どのような点に注意が必要なのでしょうか。

(1)キャッシュカードを家族に預ける場合の注意点

単純に自分名義のキャッシュカードを渡し、暗証番号を教えるだけでも対応することは可能です。ただし、銀行の規約上は、本人が同意している場合でも、第三者に権利を譲渡することや貸与することは禁止されています。
また、キャッシュカードを預けたまま認知症になった場合や死亡した場合など、他の相続人とキャッシュカードを預けた人との間でもめる原因となる可能性もあるため注意が必要です。

(2)家族名義の口座に資金を移す際の注意点

では、家族名義の口座に資金を移すという方法はどうでしょうか。
少額であれば特に問題はないでしょう。ただし、年間110万円以上の資金の移動には贈与税がかかるという点には注意が必要です。大きい金額を移動したい場合は、後々のトラブルを防ぐためにも、家族間でも契約書類を作成して確定申告を行うようにしましょう。

(3)代理人カードを利用する方法

資金を移動することなく、口座の管理を家族に任せたい場合は、銀行に事情を話して相談してみるとよいでしょう。銀行によっては代理人カードといって、名義人の生計を同じくする親族に限り、代理人用のカードを作成できることもあります。他にも、事前に任意代理人として届出を出しておくことで、任意代理人が預金を引き出すことが可能となる制度を設けている銀行もあります。
クレジットカードの家族カードを作っておくというのも、認知症などの際の生活費の対策として有効かもしれません。

(4)家族信託や任意後見人制度を検討すべきケース

賃貸不動産などを所持していて、管理のための資金を家族に預けたいという場合などは、家族信託を利用することをおすすめします。

家族信託については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

参考記事:認知症になる前に家族信託を契約する意義・軽度の認知症なら契約可能?

さらに認知症リスクに備えたいという場合は、任意後見人契約や財産管理委任契約という方法もありますが、いずれの方法にしても、認知症になってからでは遅いという点には注意が必要です。
認知症リスクに備えたい、老後の資金管理に不安があるという方は、「まだ早い」と思わずに、早期に対策を検討することをおすすめします。

6.銀行口座の整理を進める上での注意点

銀行口座の整理を行う上で、どのような事に注意すれば良いのでしょうか。

(1)本当に使用していないか確認する

まずは、本当に使用していないかしっかり確認をすることが大切です。引き落とし口座になっていた場合など、後から引き落としができないという連絡が来る可能性があります。解約前に必ず記帳をするなどして、取引履歴を確認しましょう。

(2)一つの口座に絞るのは止めた方が良い

銀行口座の整理を進める上で、もう面倒だからメインバンク一つにまとめてしまおうと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、一つの銀行にすべての資金をまとめることはあまりお勧めできません。
万一、認知症になった時に凍結されるリスクや、銀行が破綻した時のリスクも考える必要があるからです。

認知症になってしまった時、一つの銀行口座が凍結されてしまったとしても、他の口座があれば、そちらから家族が預金を引き出すことができる可能性があります。そのため、認知症になった時の口座凍結リスクを分散するためには、複数の口座を所持していたほうが良いといえるのです。
また、金融機関が破綻した時に保護される預金額は、1金融機関につき預金者一人当たり元本1千万円までです。そのため、例えば3千万円の預金がある場合は、一つの金融機関ではなく、3つの金融機関に分散して保持した方が安全といえるでしょう。

キャッシュカードを紛失した際も再発行には時間がかかる可能性もるので、やはり銀行口座はメイン口座以外にもサブ口座があった方が良いといえます。
資産状況や取引状況にもよりますが、管理上、銀行口座は3つ程度を目安に整理すると良いでしょう。

まとめ

今回は、生前に銀行口座の整理が必要な理由、銀行口座の整理を始めるタイミング、解約するか否かの判断基準、家族に資金管理を任せる方法、銀行口座の整理を進める上での注意点などについて解説しました。

転職や引っ越しをきっかけに銀行口座を使わなくなることは、よくあることだと思います。しかし、休眠口座をそのまま放置しておくと、自分の大切な資産が相続されずに忘れ去られることになりかねません。わずかな金額だからと放置せずに、銀行口座の整理は早めに行うようにしましょう。家族に預貯金の管理を委ねたい場合や、生前贈与を検討しているけれど方法がわからない場合などは、相続関係に詳しい専門家に相談することをおすすめします。

この記事を書いた人
しいば もとふみ
椎葉基史

司法書士法人ABC
代表司法書士

司法書士(大阪司法書士会 第5096号、簡裁訴訟代理関係業務認定第612080号)
家族信託専門士 司法書士法人ABC代表社員
NPO法人相続アドバイザー協議会理事
株式会社アスクエスト代表取締役
株式会社負動産相談センター取締役

熊本県人吉市出身、熊本高校卒業。
大手司法書士法人で修行後、平成20年大阪市内で司法書士事務所(現 司法書士法人ABC)を開業。
負債相続の専門家が、量においても質においても完全に不足している状況に対し、「切実に困っている人たちにとってのセーフティネットとなるべき」と考え、平成23年に相続放棄専門の窓口「相続放棄相談センター」を立ち上げる。年々相談は増加しており、債務相続をめぐる問題の専門事務所として、年間1400件を超える相談を受ける。
業界でも取扱いの少ない相続の限定承認手続きにも積極的に取り組み、年間40件程度と圧倒的な取り組み実績を持つ。

【 TV(NHK・テレビ朝日・フジテレビ・関西テレビ・毎日放送)・ラジオ・経済紙等メディア出演多数 】

■書籍  『身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」が分かる本』(ポプラ社)
 ■DVD 『知っておくべき負債相続と生命保険活用術』(㈱セールス手帖社保険 FPS研究所)

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