生前対策

エンディングノートの書き方と記載事項を解説・ケース別の記載例も

死を前にした人が遺族に残すものといえば、遺言書です。遺言書には、自身の財産を誰に何を相続させるか、保険金の受取人を誰にするかなどといった内容のことを記載し、それは法的効力を有する重要書類となります。作成の際には、弁護士への依頼や報酬の支払いなどの手続きが必要になります。

 

もちろん、遺言書には遺言作成者の思いが込められていることに違いはありませんが、内容は極めて事務的であり、主に相続に関する必要事項だけがシンプルに記載されているといった書類です。遺言作成者の思いや長きにわたる人生の全てが込められているかというと、それには程遠い内容です。

 

死を前にした人が後世に残したいのは、遺言書に記載するような事務的な内容ばかりではないはず。自身の長きにわたる人生についてもっと自由に表現してもいいし、わかりやすい形で遺されたものたちへ金言や感謝の気持ちを贈っても良い。もちろん、文字に頼らず写真や絵を織り交ぜると、執筆者のひととなりをより表現しやすい。

 

遺言書では表現できない自分の思いをもっと自由に。そんな思いからエンディングノートが考案されました。

 

エンディングノートは、遺言書とは異なり法的効力は発生しませんが、法などに縛られることなく自由闊達に遺言作成者が自身の思いや遺言を後世に遺そうというものです。エンディングノートの作成は遺言作成者にとっても大きなメリットがあり、また遺族にとっても極めて貴重な資料となります。近年では、専用のエンディングノートも文具店等で販売されています。

 

今回はそんなエンディングノートについて解説いたします。

 

【目次】
1. エンディングノートの書式
2. エンディングノートの種類
3. エンディングノートの記載事項
4. 記載しない方がよい内容
5. ケース別の記載例
6. エンディングノートの保管場所と注意点
7. まとめ

 

1. エンディングノートの書式

エンディングノートには何を書けば良いのか。冒頭でもお話したように、エンディングノートに決まった書式はなく、遺言作成者が自由闊達に自身のこれまでの長きにわたる人生について、自身の財産の取り扱いについて、そして家族や親族などへ贈る言葉などを書き記すものです。

 

例えば、遺言作成者が「自分はこれについて書きたい」「こういった思いを後世の者たちに残したい」と書く内容を決めていれば、まっさらな大学ノートにそれを余すことなく書き記す。それだけでエンディングノートは完成します。遺言書の作成のようなややこしい手続きなどは全く必要ありません。

 

しかし、遺言作成者にとってこれまでの人生はあまりにも長く、そしてあまりにも多くの出来事、分岐点、紆余曲折があったことでしょう。いざ、ペンを片手にまっさらなノートを前にしたところで一体どこから書き出せば良いのか、と迷うはずです。

 

迷ったとしても一旦書き出すことができれば、あとは次から次へと湧き出る過去の記憶をただひたすら文章で表現すればいいだけです。

 

ただ、一文字も書き出すことができず、結局あきらめてしまう遺言作成者も決して珍しくありません。

 

そんな遺言作成者には市販のエンディングノートの購入をオススメします

2. エンディングノートの種類

市販のエンディングノートはどういったものか。各社それぞれオリジナルのエンディングノートを取り扱っており、それらは多種に及びます。とはいえ、エンディングノートを選ぶ基準は遺言作成者が何を書き記したいか、何を書き遺す必要があるか、ということに尽きます。

 

以下に各社のエンディングノートを紹介します。それぞれ目的別のエンデイングノートを取り扱っており、選ぶ際の参考になるはずです。なお、いずれのエンデイングノートも文具店や書店で入手できます。費用も1000円〜1500円程度です。

 

・もしもの時に役立つノート(コクヨ)
銀行口座や保険に関する重要事項、連絡先などが記載できるようになっており、備忘録としても最適です。

 

・ハッピーライフエンディングノート(ヨシダヤ)
難しい項目をチェック式で記載できるように工夫されたノートで、誰でも簡単に重要事項の記録が可能です。

 

・一番わかりやすいエンディングノート(リベラル社)
自分の住所や連絡先、銀行口座、預貯金といった重要事項をマル秘カードやスクラッチシールで保護することができるよう工夫されたエンデイングノートです。

 

・もしもに備える安心ノート(永岡書店)
遺言作成者の基本情報や銀行口座情報などを記載しやすいように工夫されており、また収納ポケットも付いているので備品の整理などにも便利で、日常生活でも使用もできるノートです。

 

・相続手続きで困らないエンディングノート(ぎょうせい)
法律系の書籍を多数出版しているぎょうせいのエンディングノートです。法律に強い同社独自の工夫として、税理士の相続税対策を動画で閲覧することができます。

 

・自分史年表+エンディングノート 令和版(K&Bパブリッシャーズ)
「人生100年時代」と言われる昨今にふさわしく100年カレンダーがついており、長きにわたるこれまでの人生を自分史年表で書き記すことができます。

 

・My Life Binder(レイメイ藤井)
システム手帳のようにリフィル形式になっており、自由に紙面の追加や差し替えが可能です。日常使いとしても便利です。

 

以上、各社で市販されている主なエンディングノートを厳選しました。ここで紹介したもの以外にも独自の工夫を凝らした面白い商品が存在しますが、エンディングノートで記載すべき内容の大部分はこの中から選択すれば間違いないでしょう。ぜひ参考にしてみてください。

3. エンディングノートの記載事項

前述したように、エンディングノートは遺言作成者が自由に記載するものであり、これを書かなくてはいけないといった決まりはありません。ただ一般的に、最低限こういうことを記載しこういう流れで記されていれば遺族は助かる、といった項目はあります

 

それを以下に記します。

 

  • 自分の基本情報について
  • 財産・資産の取り扱いについて
  • 身の回りのことについて
  • 医療・介護について
  • 葬式・納骨について
  • 相続・遺言書について
  • 連絡先

これらの項目は遺言作成者が亡くなったあとのことだけではなく、痴呆症やアルツハイマー病等で意思疎通が出来なくなった時のことを想定した場合も含まれています

 

上記以外の記載事項としては、自身のこれまでの人生を振り返る「自分史」の作成などがあります。これまで自分がどう生きてきたか、どんな学びがあったか、どうやって今日まで成長してきたかなどを振り返ることで、残りの人生をより有意義なものにするきっかけにすることができます。

4. 記載しない方がよい内容

では逆に、エンディングノートに記載しない方が良いことは何か。エンディングノートは、遺言作成者の死後、家族や親族の目に触れることを想定して遺すものであるため、自身のイメージ悪化につながるような秘密や家族関係が悪化してしまう原因になるようなことは書かない方が良いでしょう。

 

例えば、自身の異性遍歴や犯罪歴など、また家族や親しい友人の暴露話、人の悪口などがそれに該当します。

 

もちろん自分史を書く上でどうしても書く必要が出てくる場合もあるでしょうが、そういう時はあまり直接的にならないようにオブラートに包むような表現で書くよう心がけるべきでしょう。ここは遺言作成者の文章センスが問われる場面です。

5. ケース別の記載例

エンデイングノートを作成する主な目的は、「人生の終焉間近に当たり、遺された家族に自分の想いを伝えること」です。前述したように、エンディングノートに決まった書式や書き方などはありませんが、これについては概ね共通していると言っていいでしょう。

 

つまりこの目的を踏まえて作成すれば、エンデイングノートは完成です。

 

では実際にエンディングノートにはどのようなことが書かれるのか。ケース別の事例を交えて説明いたします。

 

• 自分の基本情報について
自分の生年月日や住所、本籍地といった基本的な情報、自分の好きな食べ物や趣味などです。自分が介護される立場になった時、介護をする人がエンディングノートを見て好みや趣味を把握してもらえれば、より質の高い介護を受けることできます。できる限り多く、詳細に書いておきましょう。

 

• 財産・資産の取り扱いについて
現金、預貯金、不動産、有価証券などの相続財産を整理しておくと良いでしょう。合わせて加入している生命保険や受取人なども書いておきましょう。ただ、後々のトラブルを避けるために、書くのであれば正確に書きましょう。また、負債も相続財産となるため、あわせて書いておく必要があります。記載にあたっては、弁護士のような専門家に相談しても良いかもしれません。

 

• 身の回りのことについて
携帯電話やパソコン、その他ご自身が契約しているものや、パスポート・運転免許などに記載されている個人情報について、わかる範囲で書いておくと遺族は助かることになります。漏れなく書いておくと良いでしょう。

 

• 医療・介護について
認知症などによる判断能力の低下、意識不明・重篤な状態に陥った時のために、アレルギーや持病、常用薬などについても書いておきましょう。
また、死の定義が議論される昨今の情勢を踏まえて、延命治療について自身の考えや希望を書いても良いでしょう。

 

• お葬式・納骨について
お葬儀の規模や参列してほしい方、喪主を任せたい方などについて自身の希望を書いてもよいかもしれません。遺影に使ってほしい写真や一緒に棺に納めてほしいものなどがあれば、合わせて書いておきましょう。

 

• 相続について
相続は、主に遺言書に記載する内容です。自身の財産を相続させる相続人や家族にとって極めて重要になるので、エンデイングノートではなく法的効力のある遺言書に記載しましょう。

 

• 連絡先
自分の親族や親しい友人の連絡先を書いておきましょう。死後に連絡してほしい場合には、そのことを記載しておくと家族も手間が省けて助かります。

 

• 家族へのメッセージ
これは上記のような事務的な内容ではなく、自身の言葉で自由に家族への感謝の気持ちを伝えると良いでしょう。ただし、恨み辛みのような内容を書くことは、たとえ事実であったとしても好ましくありません。

 

他にも、犬や猫のようなペットを飼っている人は自分が亡くなった後のペットの引受先を探しておかなくてはなりません。家族と同居していれば、引き続き家族が世話をすることになるでしょうが、身寄りのない方の場合、ペットだけがそのまま放置されることになってしまいます。事前に役所などに相談しておきましょう。

6. エンディングノートの保管場所と注意点

エンディングノートの記載事例でも示したように、遺言作成者の個人情報や資産などの情報が多く記載されることになります。そのため、普段目につくような場所に置いておくのは危険です。金庫に保管とまでいかなくとも、あまり目につかないような場所に保管してくと良いでしょう。

 

また、信頼できる親族1人か2人にエンデイングノートの存在を伝えておきましょう

7. まとめ

日常生活や仕事、趣味、休みの過ごし方など、ライフスタイルに大きな変化が見られるようになった昨今、死というものについても見直されるようになりました。以前は、死について考えることはタブーとすらされていましたが、今は違います。「終活」という言葉が一般的になってきたように、自身の死についてもっと前向きに考えようという考え方が根付きつつあります。

 

もちろん死とは忌むべきもの、毎年多くの自殺者が出てしまう今の世の中では、そう考えるのが自然なのかもしれません。実際に多くのが死を避けて生きているのです。

 

しかし、死は誰もが必ずたどり着くものであり、そこに例外などあり得ません。80年90年もの長い人生を全うし、すでに老後を迎えた方々にとって死は忌むべきものではなく、むしろ記念すべき終焉なのかもしれません。

 

小説家の村上春樹氏は自身の著書の中で、死についてこのように表現しています。

 

「死とは生の対極にあるものではなく、生の一部として育まれるもの」

 

つまり、人は生きて生活する中で同時に死というものも育んでいるということを意味する言葉であり、誰にとっても死は身近なものであるということなのです。仮にそれが事実ならば、死をもっと前向きに捉えても良いのではないか、思います。

 

その考えがエンディングノートというものの作成に現れているのです。

 

エンディングノートを作成することで、これまでの自身の人生を振り返り、そしてそこから死を迎える瞬間までの人生について希望を見出すきっかけとすることができるのです。

 

「最高に充実した人生だった」そう笑って人生の終焉を迎えるために、エンディングノートは大切な役割を果たしてくれることでしょう。

 

 

この記事を書いた人
まつだ りょうすけ
松田了介

司法書士(大阪司法書士会 第4902号、簡裁訴訟代理関係業務認定第1612053号)
司法書士法人ABC社員
行政書士有資格
大阪府堺市出身
桃山学院高等学校・同志社大学法学部卒業
世界最大手の国際物流サービス会社であるフェデックスに24年間勤務。グローバルセールスとして物流価値を創造するソリューションを提案、企業のグローバルビジネスをサポート。
以前より中小企業の事業承継や相続の仕事に携わりたいと考えており司法書士になることを決意。
平成28年に司法書士試験に合格し、フェデックス退職後、司法書士法人ABCへ入社。
日々寄せられる事業承継や相続の相談について丁寧に対応、現状を把握し、最適な解決方法を提案。
お客様にご納得いただける手続きを提供すべく、知識の研鑽に努めている。

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