人は誰しも人生のエンディングを迎えるもの。そこに例外などあり得ません。どんなに莫大な資産を残した人でも、後の世にまで影響を与え続ける名著を残した人でも、世界的に有名な芸術家でも、はたまたかつて罪を犯してしまった人であっても同様に死を迎える瞬間があり、死を迎えればただの1人の人間です。
歳を重ね高齢者となった人は死を前にして何を思うか。悲しみにくれるか、恐怖するか、絶望を味わうか・・・もちろん多くの人が長生きを望み、死を迎えるその日まで健やかに健康に生きることを望みます。とはいえ、逃れられない死という現実から目を背けることに意味はありません。
逃れられないのであれば、いっそのこと死をもっと前向きに捉えてみてはどうか。そんな逆転の発想から「終活」という言葉が誕生、その中で死を迎えるための準備としての活動が提案されました。終活の記録等は専用のノートに記録され、それがエンデイングノートです。
前向きな死という発想から誕生したエンディングノート、そこには死を迎える人の情報、遺族や相続人へのメッセージなどの全てが詰め込まれます。エンディングノートは終活を行なう者とって、そして遺族にとっても欠かせない重要資料となるわけです。
数年かけてエンディングノートは完成、その後作成者は死を迎え、エンディングノートの管理は遺族に託されることになります。作成者の財産や希望、考え方、生き様の全てが記載されたそのノートは、遺族の死後事務にかかる手間を大いに省き、場合によっては、遺族はそのノートを人生の大きな糧とすることができるのです。
ここである疑問が生じます。終活はあくまでも託す相手がいて初めて成立するもの。託す相手とは家族や親族のような遺族、友人、知人などがそれに該当します。ところがそのような身元保証ができる者、死後の自分を供養してくれる人が1人もいない、いわゆる「おひとりさま」は終活する理由がないのか、ということです。
また血縁関係者がいたとしても、疎遠で長年顔を合わせていない、互いに険悪な関係のまま修復がなされていないと入った事情を持つ家庭も多く存在します。
他にも法律に詳しくない、終活の進め方がわからないといった人も多くいらっしゃるはずです。
そのような人にとって終活は全く無意味なのでしょうか。それは違います。終活はどのような人にとっても意味のあるものであり、終活によって残りの人生を有意義なものにすることができるのです。
たった1人の終活、それをどのように進めていけばよいのか。そんな人のためにあるサービスが存在します。それが「終活代行サービス」です。
今回はそんな終活代行サービスについて解説いたします。
【 目次 】
1.終活の代行サービスとは
どんな方でも、どんな人生を送ってきた人であっても、死を迎える瞬間はその人の人生の集大成。可能な限り自分の望む形で悔いのないように迎えたいものです。とはいえ、自分1人でそれを実現させるのは困難な場合もあります。そんな時頼りになるのはやはり家族の存在です。
「どんなことでも言ってくれ、親父の望みはなんとしても俺が実現させてやるから」と胸を張る自分の息子に頼もしさを感じる。こいつがいればもう大丈夫、この世における自分の役割は終わった、心置きなくあの世に旅立てる、と笑って死を迎えることができればどんなに幸せなことでしょう。
しかし、そんな孝行息子がいない、いや家族すらいない、いわゆる「おひとりさま」の人が増えつつあります。自分が死を迎える時、病気で体を動かすことが困難になってしまった時、保証人が1人もいない自分は一体どうすればいいのか。そんな悩みを抱える方がたくさんいらっしゃいます。
そういう人にとって頼りになるサービス、それが「終活の代行サービス」です。本人に成り代わって終活に関するあらゆる手続きや届け出、各種書類作成等の対応を幅広く委任することができ、「おひとりさま」にとってはまさに心の拠り所とも言えるサービスです。
2.終活の代行サービスを利用するメリット
基本的に終活とは死を迎える本人が行なう活動であり、終活開始時から本人が死を迎えるまでの期間に行なう活動、ということになります。もちろんその中には自分の死後の葬儀やお墓、霊園についての希望を記すこともできますが、それを執行するのは本人ではなく遺族です。
終活の代行サービスは名称こそ終活ですが、実際のサービス内容はより幅広く設定することができます。
例えば、エンディングノートに記載する内容についての相談や自身の資産の処分方法、葬儀、お墓についての相談はもちろんのこと、ご自身の身の回りのことや病院の手続き、その他医療に対することなど総合的に依頼が可能です。
また人生のエンディング直前において過剰な延命治療を希望せず自然な流れによる死、いわゆる尊厳死を希望する場合はその意志を反映させることもできます。
代行サービスを運営する事業者は法の専門家である弁護士や司法書士、行政書士の事務所であることが多く、法的知識や経験も豊富なので安心です。任意後見の制度と似ていますが、法に依らない終活というものを扱う点、また法に関する手続きだけでなく依頼者の生活に密接に関わる点でも異なります。
もちろん「おひとりさま」でなくても、なんらかの事情で家族と疎遠になってしまった、連絡が取れないなどといった事情を抱えている方も依頼することができます。
終活の代行サービスの依頼は基本的にオーダーメイドになります。依頼者が終活で何をしたいのか、遺族に何を伝えたいのか、何を残したいのか、葬儀における希望などの意向を事業者に伝え、事業者がその内容に基づいてプランと報酬額を提案、双方合意すれば委任契約が成立します。
「おひとりさま」の依頼の場合は、生活の支援、遺言作成や死後事務委任契約、通院、診察の付き添い、入院や施設入所時の身元引受人、介護や保険の手続き、死後の葬式や納骨、死後事務処理、遺品整理、遺言の執行などが依頼内容となるでしょう。葬儀の際は喪主としての役割を果たしてくれる場合もあります。
遺産に不動産が含まれる場合は、名義変更、相続などの手続きをプランに加えることもできます。
このように依頼者それぞれの事情に沿った形での終活を代行、もしくはサポートを依頼することができます。
充実した終活をすることで思い残すことなく死を迎えることができるだけでなく、人生の期限を意識することで残りの人生をより有意義なものにしようとする想いも生まれることになる。それが終活の大きなメリットであり、終活の代行サービスのメリットでもあるのです。
3.終活の代行サービスを利用する際の注意点
このように終活の代行サービスは、人生のエンディングを迎える人にとって非常に価値あるサービスではありますが、注意すべき点もあります。
まず、本当に信頼できる事業者を選択しなければならないという点です。比較的短い期間とはいえ、依頼内容次第では自分のプライベートに深く関わってもらうことになるので、事業者との信頼関係は非常に重要です。
終活の代行サービスを行なう事業者は全国に何社も存在します。その中から自分に合う1社を決めるためには、評判の良い事業者を友人や知人、もしくは役所で紹介してもらい、実際に会って話してみる必要があります。もちろん複数の会社の担当者と会ってサービスの内容を聞くことになります。
事業者の知識や経験も大切ですが、何よりも自分と話して波長が合うか、信頼できるかという点が最も重要かもしれません。
法の知識はあるし経験も豊富な事業者を紹介してもらい実際に話してみたが、こことはどうも合わない、付き合ってみても信頼が発生しそうもないという場合は依頼を再検討した法が良いでしょう。
複数の事業者と会うのはお金の面でも重要です。1社だけしか会わず、サービスにかかる費用の見積もりも1社だけだと相場観がわからず、費用面の負担が大きくなってしまいます。
複数の事業者と会ってそれぞれ見積書を作成してもらい価格を比較する。そうすることによって終活の代行サービスの相場観がわかり、事業者を選択する際の重要な視点にすることができます。
4.終活の代行サービスを選ぶポイント
では、どのような事業者を選択すればいいのか。選ぶポイントについてお話いたします。ポイントは以下の通りです。
- 適切な資格を保有し、法制度について理解している
- 契約前に実際にサービスを担当するスタッフと会わせてくれる
- 料金体系がわかりやすい
代行サービスは、各種の法的知識と経験が必要不可欠です。そのため弁護士や行政書士のような専門家が在籍する事務所が行なう場合が多いのですが、他にも民間資格である生前整理アドバイザーを保有する片付けのプロや遺品整理士といった終活に特化した専門家が行なう場合もあります。これから依頼しようとしている事業者がどのような資格を保有しているかを確認してみてもいいでしょう。
この時、実際にサービスを実施するスタッフと会わしてくれるかどうかが大切です。契約締結後、スタッフとは身内のような近しい関係を築くことになるので、まずは直接対面してみる必要があります。この時、スタッフの保有する資格についても聞いてみるといいでしょう。
料金については前述していますが、わかりやすい料金体系を採用している事業者を選ぶ方がいいでしょう。総額をぼやかす事業者は、あとで追加料金を請求してくる可能性があるので要注意です。
5.終活の代行サービスを依頼するタイミング
終活の代行サービスの依頼をするタイミングはいつがいいのか。これについては終活を開始するタイミングと同様に考えていいでしょう。つまり、自分が元気なうちに依頼することが理想的です。
もちろん、自分が元気なうちだと終活について考えが及ばないこともあるとは思いますが、体が不自由になってしまった後や判断力が低下した後だと、じっくりと事業者を選択する余裕もなくなり、結果的に評判の良くない事業者に依頼してしまう可能性が高くなってしまいます。
それ以外で依頼の理想的なタイミングは一概に言うことはできませんが、人生の節目での依頼を検討すると良いでしょう。例えば、長年勤めてきた会社を定年退職した時、孫が誕生した時、会社の経営権を息子に譲った時などを節目と捉えて終活を開始するか、終活の代行サービスの依頼を検討するといいかもしれません。
自分はまだ元気で終活を始めるのはまだ早いがサポートだけなら受けたい、という場合は、代行サービスに入会し会員になることで、必要なサポートを受けることができます。比較的安価な入会のプランを設定している事業者もありますので、そういう事業者を探してもいいでしょう。
6.終活に関する相談先
終活についての相談は、各地方自治体や終活専門の団体で行なっています。そこで、自分の家族や親族との関係性や資産などについて話し、どのように終活を進めれば良いのかを相談することができます。
もちろん複雑な法的対処が必要な状況だと回答が困難な場合もありますが、そんな時は法律事務所を案内してくれます。無料の法律相談を希望であれば、法テラスを利用すると良いでしょう。
他にも民間の相談窓口を開設している専門家も数多くいます。ネットで検索して電話で相談してみると良いでしょう。多くの場合、最初は無料で相談に応じてくれます。特に郵便局では終活紹介サービスが行われており、各人の事情に応じた事業者を紹介してくれます。積極的に利用するといいでしょう。
まとめ
決して逃れることができない死という現実をどのように受け止めるか。一昔前であれば、死を直前にした人が実施する終活といえば遺言書の作成が主流でした。それもある程度以上の資産を保有している人が自身の家族への形見分けをする目的で作成するものであり、そこには書式や形式の自由はほとんどありませんでした。
しかし、時代は変わりました。死という現実をしっかりと自分のこととして捉え、明るくその準備を行なう。家族に対して自分が終活を始める、と宣言する人もいます。
終活の代行サービスはそんな時勢を見越して誕生したサービスであり、死を現実のものとして明るく捉えようとする人にとっては非常に価値のあるサービスです。
特におひとりさまにとって、これほどありがたいサービスはない、とすら言えます。自宅でたった1人過ごす方、すでに施設へ入居している方の中には、ただ死を待つだけの毎日を過ごす方も多くいらっしゃいます。終活の実施はそのような方々に生きる希望を与える可能性があるのです。
死を意識することは、すなわち生を意識することでもあるのですから。