遺言書の書き方とケース別の記載例

生前対策

遺言書の書き方とケース別の記載例・預け先を選ぶ際の注意点も解説

人が死を間近にした時、残された家族や親族のことを考えるならば、自身の残す財産をどうするか、ということについて決めておかなくてはなりません。家族や親族間のトラブルを避けるためです。いわゆる終活と呼ばれる活動です。

多額の預貯金、土地や建物のような不動産等を所有しているならばなおさらです。

自身の遺産を家族や親族にどのように相続させるか、もちろん現所有者の意向は最大限考慮すべきでしょうが、家族や親族ができるだけ不満を抱かないよう配慮するに越したことはないでしょう。

ただし遺産の扱いは、法律等の専門知識要する場合が多いため簡単なことではありません。遺産の扱いについて、弁護士や司法書士のような専門家からのアドバイスと必要なサポートを受けることをお勧めします。

この時、財産の取り扱いや相続について記載する書類が遺言書です。

遺言書は法的強制力を持つ書類であり、遺族は基本的にこの書類に逆らうことはできません。それほど強い効力を持ちます。

ただし、遺言書に効力を持たせるためには、民法の規定にしたがって記載すること、民法で定められた遺言の要件を満たすことが極めて重要です

そこで今回は、遺言書の書き方やそのポイント、記載例、預け先等について解説いたします。

1.遺言書の役割と法的効力

遺言書は、遺言者が死亡した後自身の所有する相続財産を、どの遺族にどう相続させるかどう承継させるか、どう遺産分割するか等について意思表示を示す役割を果たすものです。

遺言書は、遺言者の意思が最も強く反映されるべきものであり、遺言書作成にあたり相続人に相談する必要はありません。ただし、第三者の立場である相続の専門家の意見を参考にすることをお勧めします。

相続財産だけでなく、遺族へのメッセージや自身の葬儀に対する希望を盛り込むことも可能です。

もちろん遺言書がなくとも、道義的に亡くなった方の意思を尊重することは非常に大切なことです。ただ、亡くなった方の意思を確実に反映させるために、法的効力が必要になってくる場合もあります。

遺言書作成により亡くなった方の意思に法的効力が発生することになりますが、どのような様式で作成された遺言書であっても法的効力が発生する、というわけではありません。民法の規定にしたがって作成し、初めて法的効力が発生します。

そうして作成された遺言書は、遺族にとって非常に重要な書類となります。遺族は遺言者の遺産相続について、基本的に遺言書にしたがわなければなりません。

なお、遺言書は、手続き内容で3種類に分けることができます。以下に説明いたします。

(1)自筆証書遺言

自分で作成する遺言書をいいます。紙とペン、あるいはパソコンがあれば誰でも気軽に作成することができ、費用もかからないため、遺言書として最も多く利用されるタイプです。遺言書の見本通りに一通り作成して、署名捺印しておけばひとまず完成です。なお、押印でも問題ありませんが、間違いなく遺言者本人が作成したものということを示すために、署名とともに捺印する方が望ましいでしょう。

遺言書の作成後は、封筒に入れて厳重に保管しておくことになります。こうすることで第三者や相続人による改ざんや偽物との入れ替えを防ぐことができます。

遺言者が亡くなった後、相続人は裁判所で遺言書の存在を確認してもらう検認という手続きが必要になります。そこまでの手続きを済ませれば、第三者である裁判所にも遺言書の存在を確認してもらうことができます。

ただし、ここで注意が必要です。それは、検認はあくまでも遺言書の存在を裁判所に確認してもらうための手続きであり検認された遺言書が法的効力を持つとは限らない、ということです。

遺言書は法的効力がなくとも、相続手続きで重要視されることが多くあり、また相続開始後の各種手続きがスムーズになるというメリットがあります。

(2)公正証書遺言

遺言書を公正証書にしたもので、公証役場で作成される遺言書です。公証役場にいる公証人が、民法の規定と依頼人からの情報に基づいて作成します。それなりの費用は発生しますが、法的効力のある遺言書を作成することができます。

遺言者の所有する財産が大きい場合、例えば、多額の預貯金や不動産などがその対象となる場合は非常に有効です。

(3)秘密証書遺言

法的効力が発生する公正証書になる点は公正証書遺言と同様ですが、遺言内容を絶対に誰にも知られたくないという場合に使用されます。

まずは、遺言者自身が遺言書を作成します。これは自筆証書遺言と同様です。作成した遺言書に捺印して、封筒に入れて封をします。

その後、遺言者は公証役場に行きます。この時、証人を2人以上用意します。ただし、未成年者、家族、親族、その他関係者は証人になることができません。

公証役場では、公証人と証人の前で、封筒の中身は自分が作成した遺言書であることと氏名と住所を告げます。その後、公証人が遺言書の提出日と申述内容を封紙に記載し、遺言者と証人がそれぞれ署名と捺印します。それで手続きは完了です。

こうすることによって、遺言書の内容が誰にも知られず秘密を守ることができます。

2.遺言書の書式と記載事項

前述したように、遺言書には規定された書式があり、それにしたがって記載することで法的効力を発生させることができます

公正証書遺言であれば、公証人が作成するので書式を気にする必要はなく記載事項に関する情報を提供するだけでいいのですが、自筆証書遺言、秘密証書遺言は自分で作成する必要があります

基本的には書式は自由ですが、やはり遺言書の規定にしたがって作成するに越したことはありません。真に自由に書くのであれば、エンディングノートを別に使用するという手段もあります。

ここでは、遺言書の書式と記載事項について説明いたします。

①表題は「遺言書」

まずは作成する書類が遺言書であること、を示しておく必要があります。作成した遺言書が、3種類のうちのいずれであっても表題は「遺言書」です。

②作成日、署名、捺印

遺言書は、「いつ、誰が作成したものか」ということを明確に示しておくことが非常に重要です。日付の記載や捺印が無いと遺言書が無効となってしまう可能性があるので注意が必要です。

③遺産の内容

遺言者の遺産のうち、どの遺産を誰に相続させるか、居宅をどうするか等を具体的に示しておく必要があります。

例えば、遺言者が不動産を所有していた場合、不動産登記の表題部を全て遺言書に記載しておかなくてはなりません。また預貯金であれば、金融機関名、支店名、講座の種類、口座番号、口座名義人を全て遺言書に記載しておかなくてはなりません。

それが遺族間の余計なトラブルを未然に防ぐ対策となります。

④遺言執行者

遺言執行者とは、相続開始後、遺言の内容を執行するために必要な手続きを行なう者のことで、遺言書で指定しておくことができます。指定は必須ではなく、遺言執行者を指定しない場合は相続人全員で手続きを行なうことになります。

ただし、相続人が複数人いると、中には遺言書の内容に異を唱える者が出てきて手続きに支障をきたす場合があります。よって、遺言執行者を指定しておくことをお勧めします。

⑤厳重に封をしておく

完成した遺言書は封筒に入れて厳重に封印することをお勧めします。封をせずとも遺言書が無効になることはありませんが、改ざんを防ぐためにも封印しておいたほうが良いでしょう。

3.遺言書作成に必要な準備

では、遺言書を作成するためにどんな準備が必要なのか。遺言書作成者ご自身のことやご家族のことに関することで、大きく3つに分けることができます。以下に説明いたします。

①財産目録の作成

遺言書に記載するための財産の対象となるものは、現金や預貯金、土地や家などの不動産、あるいは車や有価証券、骨董品といったものになります。

ご自身がどのくらいの預貯金や現金を所有しているのか、土地や宅地のような不動産を所有しているのか、車や趣味のコレクションなどはどのくらいあるのか、普段の生活において意識することではないと思いますが、遺言書作成には必要な項目となります。

ご自身の所有財産を見直し、財産目録を作成してみましょう。

②家系図の作成

意外と難しいのが、ご自身の家族や親族の関係性を示した家系図の作成です。比較的近い関係の親族であればわかりやすいのですが、疎遠になっている親族、連絡がつかず生死すらわからない親族がいると、家系図の作成は困難になります。

家系図は法定相続人を確認するためのものであるため、すでに相続人を決めている場合は不要になることもあります。ただし、法定相続人が遺留分を請求することもあるので、家系図はあったほうがわかりやすいでしょう。

②財産分配の検討

①で作成した財産目録と②で作成した家系図を確認しながら、誰にどの財産を相続させるかについて検討します。

遺言者が1人で準備しても良いのですが、かなりの手間である上に法的知識があったほうが良い箇所もあります。専門家に相談しながら準備することをお勧めします。

4.ケース別の記載例

遺言書の各項目、流れは前述した通りです。基本的に遺言書の記載内容は、遺言者が自由に決めることができますが、本当に自由に勝手気ままに書いてしまうと正式な遺言書として認められず法的効力がないものとなってしまいます。

遺言者の事情は千差万別、配偶者や子供達に残したいメッセージも様々でしょうが、やはり民法の規定に従った形式での遺言書の作成が必要となります。

そこで遺言書のケース別の記載例を以下に記します。

(1)不動産を相続させたい場合

まず、以下の文例を記載します。

「遺言者○○○は、次の通り遺言する。」
「遺言者は、遺言者の有する下記の不動産を遺言者の妻○○○(生年月日を記載)に相続させる。」

続いて遺言者が所有する不動産の情報を記します。土地の項目は所在、地番、地目、地積になります。家屋の項目は所在、家屋番号、種類、構造、床面積になります。

これらを過不足なく記載することで、不動産を相続させる遺言書となります。

(2)動産を相続させたい場合(ここでは自動車とする)

まず、以下の文例を記載します。

「遺言者○○○は、次の通り遺言する。」
「遺言者は、遺言者の有する下記の自動車を遺言者の長男○○○(生年月日を記載)に相続させる。」

続いて相続させる自動車の登録番号、種別、用途、車名、形式、車台番号を過不足なく記載します。自動車の場合、これらの情報は車検証に記載されていますので、それをそのまま書き写すだけです。

(3)株券などの有価証券を相続させたい場合

まず、以下の文例を記載します。

「遺言者○○○は、次の通り遺言する。」

続いて、以下のように記載します。

「遺言者は、○○証券○○支店に預託している株式、公社債、投資信託の全て及びこれに関する未収配当金その他の一切の権利を、遺言者の妻○○○(生年月日を記載)に相続させる。」

また、2社以上の株式を各相続人に相続させる場合は、その旨を箇条書きで記します。

5.預け先を選ぶ際の注意点

作成した遺言書は、どのように保管しておけば良いでしょうか。

公正証書遺言であれば、原本を公証役場が預かってくれますが、自筆証書遺言や秘密証書遺言は、遺言者が何らかの形で保管しておく必要があります。

遺言者自身が安心できる保管場所を確保しているか、信頼できる預け先があれば問題ありません。ただし、遺言書の預け先を安易に決めてしまうと、誤って破棄されてしまう、または利害関係者によって遺言書が書き換えられてしまうこともあります。

よって、より確実に保管できる場所を選定する必要があるでしょう。

例えば銀行の貸金庫です。各支店に設置されている貸金庫ならば安心して預けておくことができます。ただし、遺言者は自身が貸金庫を利用していることを信頼出来る者に知らせておかなくてはなりません。それをせずして亡くなってしまうと、遺言書が発見されないままになってしまいます。

遺言者は、自身の遺言書の重要性を認識してより慎重に預け先を決める必要があります。

6.遺言書に関する相談先

遺言書の作成は、法律の知識、特に相続の知識や実務経験が重要になってくるため、弁護士や司法書士、行政書士のような専門家に相談することをお勧めします。

また、役所でも専門の相談員が対応してくれることがあります。日々多くの相談者に対応されているため事前の予約は必要ですが、無料で相談に応じてくれます。あるいは、各地の弁護士会が主催している遺言相続センターを利用してもいいでしょう。

中には、遺言書を預かるというサービスをしている司法書士法人の事務所もあります。そういうところに相談すれば安心です。

まとめ

相続開始後、遺族や相続人は葬儀や役所への届け出、遺産整理、相続税の計算や納税など、煩雑な事務作業に追われることになります。

また、遺言者の遺産を巡って家族間や親族間でトラブルとなる事例、例えば、1人の相続人が遺留分を侵害したとして他の家族や親族が遺留分滅殺請求するような事例も多く発生しています。

そういった事例は拗れることも多く、解決まで数年を要することも珍しくありません。

遺言書を確実に作成することで、そういった家族親族間の余計なトラブルを防ぐために大いに役立てることができるのです。

遺言書作成は決して楽な作業ではなく、非常に煩雑で手間も時間もかかります。しかし、遺族がトラブルなくいつまでも良い関係を保つためにも、時間をかけて専門家の意見も参考にして作成することが非常に重要なのです。

この記事を書いた人
しいば もとふみ
椎葉基史

司法書士法人ABC
代表司法書士

司法書士(大阪司法書士会 第5096号、簡裁訴訟代理関係業務認定第612080号)
家族信託専門士 司法書士法人ABC代表社員
NPO法人相続アドバイザー協議会理事
株式会社アスクエスト代表取締役
株式会社負動産相談センター取締役

熊本県人吉市出身、熊本高校卒業。
大手司法書士法人で修行後、平成20年大阪市内で司法書士事務所(現 司法書士法人ABC)を開業。
負債相続の専門家が、量においても質においても完全に不足している状況に対し、「切実に困っている人たちにとってのセーフティネットとなるべき」と考え、平成23年に相続放棄専門の窓口「相続放棄相談センター」を立ち上げる。年々相談は増加しており、債務相続をめぐる問題の専門事務所として、年間1400件を超える相談を受ける。
業界でも取扱いの少ない相続の限定承認手続きにも積極的に取り組み、年間40件程度と圧倒的な取り組み実績を持つ。

【 TV(NHK・テレビ朝日・フジテレビ・関西テレビ・毎日放送)・ラジオ・経済紙等メディア出演多数 】

■書籍  『身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」が分かる本』(ポプラ社)
 ■DVD 『知っておくべき負債相続と生命保険活用術』(㈱セールス手帖社保険 FPS研究所)

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