近年、新型コロナウィルスの流行もあり、自身の死というものを意識した方も多いのではないでしょうか。万一に備えて終活をしておいた良いかもしれないと思いつつも、「まだ早いのではないか」「終活を始めるタイミングがわからない」などと、躊躇している方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、いつ終活を始めたらよいかお悩みの方に向けて、終活の目的、終活を始める平均的な年齢、終活を始める最適なタイミング、元気なうちに終活を始めるメリット、終活のタイムリミット、終活に関する相談先などについて解説します。
【 目次 】
1. 終活の目的
「終活」という言葉を耳にしたことがある方は増えていると思いますが、具体的にどのような事を行うのか、またどのような目的で行うのかについては、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。
まずは、終活とはどのようなもので、何のために行うのか具体的に説明します。
(1)終活とは
終活は、「自らの人生の終わりに向けた活動」を略した言葉です。自らの晩年の過ごし方(介護、医療、住居など)、死後の希望(葬儀、お墓、遺産相続など)について自分の具体的な希望を定めて、それに対して今できることを行うことが終活です。
具体的には、以下のような活動が挙げられます。
- 遺言書の作成
- エンディングノートの作成
- 葬儀の予約
- 墓の購入
- 断捨離などの身辺整理
- 不動産やコレクション等の売却
- 老人ホーム、高齢者施設等への入居
(2)晩年を希望通りに過ごすため
終活の目的の一つは、自身の希望に沿った晩年を過ごすためです。
晩年の医療や介護について、あらかじめ家族に自分の具体的な希望を伝えておくことや、エンディングノートなどに記述しておくことで、万一、心身の不調により意思の伝達ができなくなったとしても、意に沿わない処遇を受けることを避けることが可能となります。
また、老人ホームなどへ転居すれば、身体が不自由になっても家族に迷惑をかけることなく快適に過ごすことができるでしょう。
(3)自分が死んだ後の希望を叶えるため
葬儀の生前予約や墓の購入をしておくことで、自分の死後についても自らの意思で決めることができます。遺産の分配方法についても、遺言を残しておけば希望に沿うように分配してもらうことができるでしょう。
(4)後に残す大切な人のため
エンディングノートにPCや使用しているウェブサイトのID・パスワード、また銀行や証券会社の口座情報、生命保険等について記しておけば、残された遺族にとって大変助けになります。また、生前に断捨離やコレクション等の整理を行っておけば、遺品整理の負担を軽減することに繋がります。
単身者や近しい親類のいない方の場合は、あらかじめ死後事務委任契約などのサービスを契約しておけば、遠い親戚などを煩わせることを避けられるでしょう。
2. 終活を始める平均的な年齢
終活を始める年齢は人それぞれですが、楽天リサーチデータの集計によると、約4割の方が60代に始めたいと回答しているようです。60代といえば、多くの企業で定年退職となり年金生活に入る方が多いことからも、人生の終わりを意識する年代といえるかもしれません。また、退職することで、終活を行う精神的・時間的な余裕ができるのも理由の一つかもしれません。
参考URL:終活に関する調査(楽天リサーチデータ)
一方、実際に終活をしているという方の年齢は、ばらつきがあるようです。40代,50代で終活を始める方もいれば、90代で何もしていないという方も少なくありません。
3. 終活を始める最適なタイミング
終活を始めたい年代は60代と考えている方が多いようですが、終活を始めるのに適したタイミングはいつなのでしょうか。
(1)退職や子どもの独立などのタイミング
実際、定年退職や子どもの独立などの生活環境の変化をきっかけに60代で終活を始めたという方は多いようです。
近親者を失くしたことや自身が病気になったことから死を意識して終活を始める方も多いようですが、高齢や病身になってしまうと思うように動けない可能性もあるため、終活を始めるのなら心身ともに健康なうちが望ましいでしょう。
個人差はありますが健康に問題がなければ、60代はまだまだ元気で体力もある方がほとんどですので、終活を始めるのに適していると思います。
(2)思いついた時が始め時
若く健康な方でも事故や急病で突然亡くなることはあります。そう考えると、終活に「早すぎる」ということはないのかもしれません。
30代~50代でまだ「自分が今すぐ死ぬとは思えない」という方でも、保険に入るのと同じ感覚で、自分の死後、家族が困らないように最低限の準備をしておくことは必要なのではないでしょうか。
4. 元気なうちに終活を始めるメリット
心身ともに健康であるうちに終活を行うことには具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。元気なうちに終活を始めるメリットについて説明します。
(1)選択肢を多く持つことができる
心身ともに健康であるうちに終活を始めるメリットの一つとして、選択肢を多く持つことができるということが挙げられます。
この先の人生が有限であることを意識することで、自分が本当にやりたいことが何かを真剣に考えた、自分が以前から行ってみたいと思っていた場所を思い出したという方もいらっしゃるでしょう。
元気なうちならば、資産や身辺を整理して、世界一周旅行に行くことや、田舎や海外などに移住することも選択できます。また、マラソンや登山など、新たな趣味に挑戦するきっかけにもなるかもしれません。
(2)家族に負担をかけずに行うことができる
元気なうちであれば、家族に負担をかけることなく終活を行うことができます。特に、断捨離やコレクションの整理、リフォームや引っ越しなどは、ある程度、体力があるうちに行うことが望ましいでしょう。
他にも、終活の際は、専門家への相談、老人ホームやお墓の見学など、遠方に出向くことも想定されるため、付き添いなしで外出できるうちに行った方が良いでしょう。
(3)経済面でのメリットも多い
終活で老後の生活について検討することは、経済面でのメリットも多いと考えられます。
例えば、介護や医療が必要になった時のことを考えると、現在加入している保険を見直す必要があることに気付くことができるかもしれません。
また、介護付き高齢者施設などを早期に検討することで、必要になってから慌てて探すより、良い条件の場所が見つかる可能性もあります。その際、今の住居を処分する場合も、計画的に行うことで有利な条件で売却できるかもしれません。
断捨離として、絵画や宝飾品のコレクションや不動産はもちろん、家具や衣類など細かいものでも売却すれば、老後資金の足しになる可能性があります。
相続についても生前贈与や不動産の名義変更などを行えば税金対策になるでしょう。
5. 終活のタイムリミット
終活は元気なうちに始めることが望ましいですが、誰もがタイミングよく始められるわけではありません。終活という考え方自体、割と近年に生まれた新しい概念ですし、忙しい日々を過ごすうちに気が付いたら高齢になっていた、もしくは突如余命を宣告されるような病が発覚したというケースもあるかもしれません。終活にタイムリミットはあるのでしょうか。
(1)心身の健康を損なう前に行いたい
前述した通り、終活は身辺の整理や重大な決断をしなければいけないため、心身ともに健康であるうちに行った方が良いです。
ただ、もしあなたが既に健康を害し、自力で動くことが難しくなっていたとしても、「終活のタイムリミットが過ぎてしまった」などと諦める必要はありません。
(2)生前であれば遅すぎることはない
生きている限り、できることは必ずあります。
遺産相続や財産管理については税理士や弁護士などの専門家に相談すれば良いですし、身辺整理は代行業者に依頼することもできます。体が自由に動かない場合でも、電話やインターネットを利用して相談することも可能ですので、できることから始めてみてはいかがでしょうか。
6. 終活に関する相談先
終活を始めたいけれど何から手を付けたらよいかわからない、専門家のアドバイスが欲しいという方もいらっしゃるかもしれません。終活について、どこに相談すれば良いのでしょうか。
(1)自治体の相談窓口
高齢者が受けることができるサービスの多くは自治体が窓口となっています。手続き上の疑問や確認したいことなどがある場合は、自治体に相談してみると良いでしょう。
また、近年は、身寄りのない方を対象とした終活サポートを行っている自治体も増えています。気になる方は、お住いの自治体にそのような制度があるか調べてみることをおすすめします。
(2)法律の専門家
資産の管理や遺産相続について相談したいという方は、専門家に相談することをおすすめします。特に遺言を残すことを考えている方は、法的な有効性を持たせるためにも、法律の専門家に相談することが望ましいでしょう。
そうはいっても、今まで法律の専門家に相談したことがないから、どこに相談すればよいかわからない、またはそんなにお金をかけられないという方もいらっしゃるかもしれません。そのような場合は、まずは自治体が行っている無料の法律相談や法テラスの無料相談などを利用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、終活の目的、終活を始める平均的な年齢、終活を始める最適なタイミング、元気なうちに終活を始めるメリット、終活のタイムリミット、終活に関する相談先について解説しました。
終活を始めるタイミングは人それぞれです。しかし、元気なうちに始めることで得られるメリットは多いといえます。また、終活で自身の死について考えることは、自分の人生が有限であることを再認識し、ただ漫然と過ごすのではなく、今の時間を大切に過ごそうと考えるきっかけにもなるでしょう。