相続放棄

相続放棄の代理申請は可能?認められる条件・申請手順と注意点を解説

相続放棄手続きはご自身で申立てることも可能ですが、専門家に依頼し、手続きや申請を代行してもらうケースが多いのが現状です。
相続順位によっては戸籍謄本の収集する際、複数の自治体へ申請しなければ収集できない場合もあります。そのような場合は非常に手間や時間がかかることも多く、相続手続きに詳しくない相続人が書類の収集・申請書類の作成をして家庭裁判所へ申し立てをすると、相続放棄の申立て期限である「相続開始後3ヶ月以内」という申立て期間内に申請書類の提出が間に合わない可能性があるからです。
また、家庭裁判所への申述まではできたとしても、申述後、家庭裁判所から送られてくる照会書の回答をしなければならず、照会書の回答次第では相続放棄手続きが認められないケースもあるため注意が必要です。
では、相続放棄手続きの代理申請をする場合、どのようなケースであれば認められるのでしょうか。
代理申請が認められるケース、代理申請をする場合の申請手順や注意点について詳しく解説します。
 

1.相続放棄の代理申請は可能か

相続放棄の代理申請は可能です。
相続放棄手続きに詳しく実務経験のある司法書士や弁護士に書類収集や申請などの手続きを代行してもらうケースも多いです。この場合、手続きの一切を代理で行ってもらう委任契約を締結します。
委任契約を結ばない限り、法律家であるとしても司法書士や弁護士は依頼人の代理として書類収集作業や相続放棄申述書の申請をすることはできません。

2.代理申請が必要となるケース

前述のケースは、相続人が任意で相続手続きを委任し代理申請するケースですが、次のように代理人でなければ申請できないケースもあります。

1.申立人が未成年

相続放棄申述人が未成年の場合、法律行為をすることができないと民法で定められています。そのため原則として法定代理人となる親権者(父・母)が相続放棄の代理申請をします。
ただし、法定代理人である父母と子が利益相反となる場合は代理人となることができませんので、特別代理人を選任して相続放棄手続きの代理申請を行う必要があります。

【  相続放棄手続きでの利益相反行為  】

未成年の子が相続放棄する場合、通常は親権者である父母が代理人として相続放棄手続きをします。
たとえは死亡した父の相続放棄をする場合、配偶者である母と第一順位相続人である子が相続人になります。
母も子も相続放棄をする場合は利益相反となりませんので母親は子の法定代理人として相続放棄手続きの代理人となることができます。
しかし、母親は相続をして遺産を引き継ぐけれども、子が相続放棄をするケースでは、利益が相反するとされ、母親は子の代理人として相続放棄手続きはできないのです。
たとえ、父親に借金があり、子に借金を背負わせたくないという理由であっても裁判所は形式的に判断するため、利益相反にあたるとして代理人となることができず、母親は相続放棄の代理申請手続きを行うことができません。
そのため、このようなケースでは特別代理人を選任する必要があります。

2.申立人に判断能力がない

相続人が認知症や知的障がいなどにより判断能力が不十分である場合、相続棄手続きをすることができません。相続放棄手続きをしなければ借金を背負うことが明らかであるとしても、相続放棄は法的な手続きのため、親や兄弟姉妹だからといって代理で手続きを行うことはできません。
このように状況が理解できない、判断能力のない方が相続放棄手続きを行う場合は成年後見制度を利用し、成年後見人が成年被後見人(判断能力がなく、成年後見人によって保護される人)に代わって代理申請をします。

【  成年後見人の役割  】

成年後見人は家庭裁判所が適任だと判断した人を選任し、選任された成年後見人は成年被後見人が生活や医療・介護福祉等のサービスを適切に受けられるように支援します。成年後見人には親や兄弟、親族が選任されるとは限らず、司法書士や弁護士が選任されるケースもあります。
また、成年後見人は家庭裁判所または成年後見監督人等に監督されており、成年後見事務について定期的に家庭裁判所へ報告する義務があります。

3.代理申請が認められる条件

1.相続人本人と委任契約を締結している

相続放棄手続きの代理申請が認められる条件は相続人本人が相続放棄をしたいという意思を持ち、代理人に手続きに関する手続き代行を委任すると意思表示したケースです。
具体的には相続放棄手続きについて委任契約を締結し、書面を作成します。
家庭裁判所に代理人が代理申請をするケースでは、相続人本人からの委任状がなければ家庭裁判所は代理申請を認めません。
相続放棄手続きは申し立て期限や必要書類など申立てるまでにすべきことや注意することが多くありますが、ご自身が相続放棄手続きをする意思があるということが重要です。そのため代理申請をする場合、相続人本人の意思を確認するためにも委任状が必要になります。

2.未成年・成年後見人などの法定代理人である

前述の通り、未成年者や、相続人の判断能力が不十分な場合、法律行為はできませんので、相続放棄手続きをすることができません。そのようなケースでは親権者や成年後見人が判断能力の不十分な相続人の法定代理人として手続きを進めます。
専門家などの第三者に手続きを依頼する場合は、親権者や成年後見人が本人に代わり相続放棄手続きの委任契約を締結します。

4.相続放棄の代理申請に必要な書類

相続放棄の代理申請をする場合、委任状が追加で必要となります。それ以外の必要書類は、相続人本人が申請する場合と変わりません。
手続きに必要な戸籍謄本や住民票についても、代理人が取得することが可能です。
戸籍の取集については相続順位や代襲相続が発生している場合などで必要な情報が異なります。専門家に依頼すると必要な戸籍謄本を収集してもらうことができます。手間がかからず、不備なく収集できるため安心です。

1.相続放棄を代理人が申請する場合の必要書類

  • 委任状
  • 相続放棄申述書(20歳位以上・未満で書式が異なる)
  • 被相続人の戸籍謄本(相続順位によって必要な情報は異なる)
  • 被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票
  • 相続人の戸籍謄本(被相続人との関係を証明できる内容のもの)
  • 申請手数料(収入印紙800円)
  • 郵便切手(料金は家庭裁判所により異なる)

2.同順位相続人の兄弟姉妹が同時に相続放棄を申立てる場合

相続人が代理人に委任するというケースではありませんが、相続放棄申述書類を兄弟姉妹同時に申し立てるため、その代表者が相続人全員分の申立て書類を代理で裁判所に申請するケースがあります。
このように同順位相続人が複数名同時に申し立てをする場合、申述に必要な共通する以下の書類を1通で済ませることができるメリットがあります。

  • 被相続人の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票

相続放棄申述書、申請手数料(収入印紙800円)、相続人の戸籍謄本、返信用郵便切手などは各々必要になります。
相続放棄手続きは各個人で申立てできる手続きですので、全員同時に申し立てる必要はありませんが、相続財産に負債があり相続放棄を全員が申し立てるのであれば、同時に申立てをすることで手間と費用を抑えることが可能です。

5.相続放棄の代理申請の手順

相続放棄の代理申請をする場合、書類収集も代理で取得してもらえるように委任契約を締結するケースがほとんどです。相続人本人が申請する場合と比べて戸籍収集などの手間を省くことができ、ずいぶん楽になります。
相続財産調査等より相続放棄することを決め、代理人と相続放棄手続きに関する一切の権限を委任する契約を締結します。その後は代理人が相続放棄申述を申請に関わるほとんどの手続きを代行します。

  • 相続放棄をする意思を確認し、相続人と代理人が委任契約をする
  • 被相続人の戸籍謄本の収集(代理人が収集)
  • 被相続人の住民票の除票取得(代理人が収集)
  • 相続人の戸籍謄本の収集(代理人が収集)
  • 相続放棄申述書の作成(代理人が作成)
  • 相続放棄申述書類一式を被相続人の最後の居住地管轄の家庭裁判所へ申請(代理人が申請)

相続放棄申述書類一式は郵便で送付しても直接裁判所へ持ち込みでも、どちらでも可能です。
申請後は裁判所からの質問状である照会書に必要事項を記入して回答し、裁判所へ返送します。
代理人が相続放棄手続きの実務経験豊富な司法書士や弁護士の場合、回答の仕方などについて、様々なアドバイスをもらえます。
相続放棄が認められましたら裁判所より相続放棄受理通知書が届きます。
また、債権者に相続放棄が認められた書類を求められた場合は、家庭裁判所へ相続放棄受理証明書の発行請求を提出します。相続放棄受理証明書は手数料を支払えば何通でも請求可能ですので、債権者への提出は相続放棄受理証明書を提出しましょう。

6.代理申請を行う場合の注意点

1.相続放棄の申立て期限に余裕を持って委任契約を結ぶ

相続放棄手続きは相続人であること知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てをしなくてはなりません。
相続手続きを専門家へ対応を依頼する場合は、書類の収集など慣れていますのでご自身で収集するよりはスムーズに収集可能だと思われますが、場合によっては多くの戸籍謄本が必要なケースや郵送で取り寄せる場合などは時間がかかりますので、時間の余裕を持って委任契約を結びましょう。

2.相続放棄をする理由や相続人との関係を正確に伝える

司法書士などの専門家へ手続きを依頼する場合、被相続人やご自身の住所・本籍地、被相続人との関係や相続放棄をすることを決意した理由などを説明する必要があります。申述書類作成にあたり、どのような理由で相続放棄を検討したのかを踏まえて作成するためです。
また、単純承認事由に該当する行為をしている場合は隠さずに伝えましょう。

3.財産調査や相続人に関する情報を正確に代理人へ伝える

財産や相続人について、ご自身の知っている限りの情報を正確に伝えましょう。
相続人については戸籍を取得することで正確に把握できますが、たとえば財産の一部を故意に隠避していた場合、相続放棄手続きが受理されない可能性がありますし、債権者とトラブルになる可能性もあります。
状況を正確に伝えることで、スムーズに手続きを進めることができますので、特に財産状況については隠さず、知りうる限りの情報を正確に代理人へ伝えましょう。

まとめ

今回は、相続放棄の代理申請をする場合の注意点や対処方法について詳しく解説しました。
相続放棄手続きは他の相続手続きに比べて比較的容易な手続きため、専門家でない一般の方でも手続きをされる方はいらっしゃいます。
しかし、場合によっては必要な書類・資料などの収集に手間取り、または裁判所からの照会書の回答方法がわからないなど専門知識が必要となるケースもあります。そのため手続を専門家に対応を依頼するケースが多いのが現状です。
また、相続人本人に相続放棄をする意思があることが重要なため、代理人が申請する場合は必ず委任契約を結ぶ必要があります。
委任契約を結び代理申請を依頼することに難しい条件はありません。委任契約を締結することで、代理人が書類収集から申請まで進めてくれるためスムーズに進みます。
また、相続人が認知症や精神疾患のあるケースでは成年後見制度を利用し、後見人が法定代理人として手続きを進めていきます。専門家と委任契約を結ぶ場合は後見人が締結します。
相続手続きや相続放棄手続きは、手続き後のトラブル防止のためにも司法書士などの専門家へ相談し進めていきましょう。また、相続放棄ではなく、場合によっては限定承認やその他の解決方法を相談者の事情に合わせて提案してもらえるなど、解決の選択肢が増える可能性もあります。
生前より相続対策を検討することで、お悩みやお困りごとが解決または軽くできる可能性がありますので、相続手続きは実務経験の豊富な専門家へ相談すると良いでしょう。

 

この記事を書いた人
まつだ りょうすけ
松田了介

司法書士(大阪司法書士会 第4902号、簡裁訴訟代理関係業務認定第1612053号)
司法書士法人ABC社員
行政書士有資格
大阪府堺市出身
桃山学院高等学校・同志社大学法学部卒業
世界最大手の国際物流サービス会社であるフェデックスに24年間勤務。グローバルセールスとして物流価値を創造するソリューションを提案、企業のグローバルビジネスをサポート。
以前より中小企業の事業承継や相続の仕事に携わりたいと考えており司法書士になることを決意。
平成28年に司法書士試験に合格し、フェデックス退職後、司法書士法人ABCへ入社。
日々寄せられる事業承継や相続の相談について丁寧に対応、現状を把握し、最適な解決方法を提案。
お客様にご納得いただける手続きを提供すべく、知識の研鑽に努めている。

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