相続

相続放棄のメリットやデメリットと出来るだけ損をしない方法

近い将来、相続の手続きをする可能性がある場合、家族と話し合う中で借金や連帯保証などの負債が判明したり、相続したくない不動産があるなどの理由から、相続放棄手続きを選択する可能性があるという方がいらっしゃると思います。
ですが、相続放棄手続きを選択した場合、

「相続放棄とはどのような手続きなのか?」
「どのようなメリット・デメリットがあるのか?」
「費用はどれくらいかかるのか?」
「専門的な知識・知見も持ち合わせておくべきなのか?」
「自分で手続き可能なのか?専門家に依頼すべきか?」
「本当に相続放棄手続きを選択してもよいのか?」

と、様々な疑問点が浮かんできて不安になるのではないかと思います。
そこで今回は相続放棄手続きのメリット・デメリットや、相続放棄手続きにかかる費用などにも触れながらわかりやすく解説致します。

 

【目次】
1.相続放棄の3つのメリット
(1)負債(借金など)の責任を負わずに済む
(2)様々なもめごとに関わらずに済む
(3)債権者からの請求に応じなくてもよい
2.相続放棄の5つのデメリット
(1)家や預金などのすべての相続財産を失う
(2)撤回や取り消しができない
(3)相続順位が移り、親戚が新たに相続人になる場合がある
(4)生命保険金等受領したときの非課税枠が使えない
(5)完全に管理責任から逃れられるとは限らない
(6)場合によっては人間関係が崩れる可能性がある
3. 相続放棄に関する知識
(1)手続きは3ヶ月以内が原則
(2)期間の延長申請(放棄の期間の伸長)
(3)3ヶ月を過ぎた場合
(4)単純承認したと解釈されると放棄が認められない可能性
(5)「相続」か「相続放棄」かの判断基準
4. 相続放棄手続きで気を付けること・よくある質問
(1)生命保険金・高額療養費の払い戻し
(2)死亡退職金
(3)賃貸物件・クレジットカード・携帯電話等の支払い・解約手続きや名義変更
(4)預金の解約・名義変更
(5)債権者への支払い・連絡
5.専門家へ依頼するメリットと費用
(1)専門家へ依頼するメリット
(2)費用
6. 相続放棄手続きをすることで負債を背負わずに済んだ事例
7. まとめ

 

1.相続放棄の3つのメリット

(1)負債(借金など)の責任を負わずに済む

相続放棄最大のメリットは、負債(借金・連帯保証債務・滞納した税金)を背負わずに済むという点です。
仮に相続放棄をしなかった場合、後に負債に関する様々なリスクを背負う可能性を残すことになります。

例えば被相続人が経営者(事業家)であった場合、家族さえ知らなった数百万単位・数千万単位の借金がある可能性や借金の連帯保証人になっている可能性を否定できません
特に連帯保証債務は、相続が発生したときには判明していなくても、被相続人(亡くなった方)の死後十数年経過後に突然通知が届き請求されることもあるのです。
相続発生時に連帯保証債務のことは知らず、何らかの財産を相続していた場合、後に連帯保証債務などの負債が判明したという理由で相続放棄申し立てをしたとしても、相続放棄が認められることは原則ありません。
何らかの財産を相続していた場合、相続していると確定され、単純承認しているとみなされてしまうためです。
特に疎遠な遠戚の財産を相続することになった場合はどのような生活状況だったのか不明の場合も多く、相続するか否かを慎重に判断をする必要があります。

相続放棄手続きをしていた場合、相続手続き期限の数年経過後にご自身が相続人だという理由で身に覚えのない請求書が届いたという場合でも、負債を背負うというリスクから解放されるので安心です。

(2)様々なもめごとに関わらずに済む

相続において親族間であっても、家などの建物・預金・負債などをめぐって様々なもめごとが起こり得ます。
相続人や相続財産が複数存在しており遺産分割協議が必要な場合、相続人間で意見が合わずに時間と労力がかかり、時には相続をきっかけに絶縁状態となり、精神的に多大なダメージをうけることも多々あります。
ご自身にはある程度の財産(預金・不動産等)があり現状の仕事も順調なため特に財産を相続する必要が無く、相続問題で無駄な時間をかけたくない場合にも相続放棄はおすすめといえます。
相続放棄が認められましたら、初めから相続人でなかったという事になりますので、遺産分割協議に参加する必要がありません。

(3)債権者からの請求に応じなくてもよい

相続放棄を申し立てることを考えている場合、債権者より「被相続人が何らかの形(口約束含む)で費用を払うことになっていた」などと請求・不当な要求をされたとしても、相続放棄を申し立てる予定だと伝えて、支払いやサインなどに応じる必要性はありません。
これは、
「相続の承認・放棄は、行使上の一身専属権(民法423条)である」
という考え方が背景にあります。
つまり相続の承認・放棄に関する権利行使は権利者の自由な意思決定に委ねられるべきなので、債権者が意思決定過程に介入するべきではないという根拠です。
少額だからといって債権者に安易に被相続人の負債を支払ってしまった場合、その支払いが万が一単純承認をしたとみなされるようなことになれば、後日巨額の負債が別に発覚した際には、もはや相続放棄が認められなくなるということもありますので注意が必要です。

2.相続放棄の5つのデメリット

(1)家や預金などのすべての相続財産を失う

相続放棄は「初めから相続人ではなかった」とみなされる手続です。したがって、相続放棄をした場合、借金や連帯保証債務などの負債だけでなく、プラスの財産も相続することができません。先祖代々守ってきた家・何十年生活してきて思い出がいっぱい詰まった家などを、手放すことになります。
住んでいる家の名義が被相続人名義で相続放棄をした場合、家に住み続けることはできなくなります。また、相続財産に賃貸物件などの不動産がある場合も、全て失うこととなります。
もし、被相続人が会社経営者であった場合などは、相続財産に自社株が含まれると考えられますが、相続放棄した場合はこの株を継ぐことも難しくなります。
したがって、相続財産の中にどうしても相続なければならない財産がある場合には、相続放棄をするか否か慎重に検討をしなければなりません。ここでは詳細は述べませんが、そういった場合には、限定承認手続きなどの検討をおすすめします。

(2)撤回や取り消しができない

相続放棄する前には気づかなかった(知らなかった)高価な相続財産があることを後に知り、やっぱり相続したいから放棄を撤回して欲しいと言ってもそれは認められません。
ですが、例外的に以下の場合のような場合は認められる場合があります。

  • 法定代理人の同意なく未成年者が相続放棄手続きをした場合(民法第5条)
  • 成年被後見人本人が相続放棄をした場合(民法第9条)
  • 詐欺や強迫などによって相続放棄をさせられた場合(民法第96条)
  • 被後見人、もしくは後見人が後見監督人の同意を得ないでおこなったもの(民法864条)

上記のような「詐欺・脅迫」や、「未成年者や成年被後見人などの制限行為能力者の法律行為」に該当する場合は相続放棄の取消が認められる可能性があります。

(3)相続順位が移り、親戚が新たに相続人になる場合がある

第一・二順位が相続放棄をすると、次順位である第三順位(叔父・叔母・甥姪など)へ相続権が移ります。
次順位で相続人となる方々も、相続放棄を申立てて受理されると負債を背負うことはありませんが、先順位の相続人が相続放棄したことによって負債を背負うかもしれない立場になるのは大変迷惑な話です。
諸事情により突然相続人となり、平穏な生活が一変し、突然他人の借金を背負うことになるかもしれないなど、精神的に大変な負担となります。
このような事態を避けるために、自身が相続放棄をする旨を事前に連絡しておくと、次順位相続人の心理的な負担は軽減されるでしょう。
また、次順位の相続人も相続放棄をするかどうか意向を確認し、相続放棄するようであれば、同じ専門家に手続きを依頼することで、次順位の相続人に手続きの手間を掛けずに済みます。

(4)生命保険金等受領したときの非課税枠が使えない

相続放棄手続きを申し立てて受理された場合でも、死亡保険金や死亡退職金などは原則相続財産ではないとされており受け取ることが可能ですが、相続税の計算上は、非課税枠は適用されなくなってしまいます。
生命保険金や死亡退職金には以下の通り非課税枠が有ります。

法定相続人の数×500万円
※「法定相続人の数」は相続放棄した人も含む。

基礎控除枠の計算においては、相続放棄をした人も頭数に入れることとなっていますが、あくまでこの控除枠を利用できるのは受取人が放棄していない相続人である場合に限ります。したがって、相続放棄をした相続人が受取人の場合は控除は適用されないのです。
また、相続放棄をすると債務控除などの控除も適用されません。
仮に相続財産は債務超過であったとしても、相続税法上「みなし相続財産」とされる死亡保険金や死亡退職金が多額にある場合は、相続税が発生する可能性がありますので注意が必要です。とはいえ、債務超過の相続を承継しなくてもよくなった上での相続税ですから、結果としてそこまで問題になることはないともいえます。
不測の事態で慌てないために、通常に相続した場合と相続放棄した場合と比較した上で、相続税がどのようになるか試算しておきましょう。

(5)完全に管理責任から逃れられるとは限らない

相続放棄をすると借金など負債をしなくても済みますが、例えば不動産などの場合、相続放棄が認められたことにより相続人となった次順位の相続人となった者が相続した財産を管理することができるようになるま自己の財産と同様に財産の管理をする必要があります(民法第940条)
では、相続人全員が相続放棄をした場合はどうなるのでしょうか?

相続放棄が認められたにもかかわらず、相続人がいないという理由でいつまでも相続財産の管理をする義務から逃れられないというのは負担が大きすぎます。
そのため、相続人全員の相続放棄によって相続人が不在となった場合、相続放棄をしたにも関わらず事実上管理を継続している相続人は家庭裁判所に相続財産管理人選任の申し立てをすることができます。
相続財産管理人が選任されると、相続財産管理人が相続財産の管理を引き継ぎ、相続財産の管理義務から解放されます。
ただし、相続財産管理人の選任申し立てをする場合、裁判所に予納金を納めなくてはなりません。
それぞれの内容によりますが、100万円程予納額もかかることがあるようです。
予納金が高額であるため相続財産管理人を選任すべきかどうか悩むところですが、相続財産に不動産が含まれている場合は相続財産管理人を選任すべきでしょう
例えば、もう誰も住んでいない空き家があるとします。仮に相続放棄をしても、この空き家に対する管理義務(建物の修繕や防犯上の措置、除草・枝切り・抜根、不法投棄防止措置等)は残ります。
そして、もしこの空き家が原因で何らかの損害が生じたら、損害賠償請求をされる可能性は否定はできません
相続財産に不動産が含まれており、その不動産が空き家などで将来近隣に迷惑がかかる恐れがある場合は、費用はかかりますが、相続財産管理人を選任しておくことをおすすめいたします。

(6)場合によっては人間関係が崩れる可能性がある

相続放棄が認められれば債務を返済する必要はありません。ですが、道義的には相続人として債務を返済するべきであるとも考えられます。
例えば法的には債権者と被相続人による金銭貸借契約だとしても、債権者の立場としては相続放棄により返済義務はないとされては不利益を被ります。もし債権者が仲の良い知人、親族などであれば悩ましい問題です。
相続放棄は法的に認められた正当な手続きですが、債権者との人間関係は崩れてしまうこともあるでしょう。

3.相続放棄に関する知識

(1)手続きは3ヶ月以内が原則

相続に関する手続きの期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時から三ヶ月以内」となっています(民法915条1項)。留意点として、初日は算入されません(民法140条)。また、期間満了日が日曜日等の休日である場合、期間はその翌日に満了します。(民法142条)
手続き期限が計算されるのは、被相続人(財産を残して亡くなった方)死亡の事実を知った時です。被相続人が亡くなった時ではありません。
例えば、故人が4月1日に亡くなり同日に相続人がその事実を知れば、対応する手続き期限は7月1日(休日であれば翌日)が最終日となります。
また、この”三ヶ月以内”というのは、相続放棄手続きの申請を家庭裁判所に提出される(申し立てる)期限が三ヶ月以内ということです。相続放棄手続き全てが終了するまでが三ヶ月という意味ではありません。

(2)期間の延長申請(放棄の期間の伸長)

3ヶ月間という日数はある程度長いので、相続放棄手続きは難なくできるだろうと思う方もいらっしゃいますが、人が亡くなった後というのは、役所に届け出る事務手続きや法事などのほかにも様々な手続きがあり、あっという間に過ぎてしまいます。
また、被相続人が経営者であった場合は、故人の資産や負債の調査が広範囲に及び3ヶ月では調査するのに時間が足りないという方も少なくありません。
さらには、相続人間で遺産分割などの話合いが長引いた場合は3ヶ月で相続するか否か判断するのが難しい事もあります。このような時には「期間の伸長申立てという方法があります。
この期間伸長の申請も、家庭裁判所に申し立てます。
申し立て期間は相続放棄手続き申し立てと同じく、自己の相続開始を知った時から三ヶ月以内です。

(3)3ヶ月を過ぎた場合

ご自身のご両親であれば死亡日や財産状況はある程度分かると思いますが、疎遠な親戚などの場合で死後三ヶ月経過後にお亡くなりになったことを知る場合があると思います。そして、その親戚の相続人のご自身がなっているという可能性もあります。
そのような場合でさらにその被相続人に莫大な借金があることが判明した場合、相続放棄を検討する可能性が高いと思いますが、三ヶ月経過している上に莫大な借金があるという状況に大変不安を感じると思います。
そのような場合でも諦めず、まずは相続や相続放棄の実務に長けた専門家(司法書士や弁護士など)へ相談することよいでしょう。
様々な状況によりますが相続放棄が認められる可能性はあり、また専門家へ相談することで現状を把握でき、どのように相続手続きを進めるべきかなど納得出来る解決方法を提案してもらえるでしょう。

(4)単純承認したと解釈されると放棄が認められない可能性

相続が発生し自身が相続人となり、被相続人に負債が判明した場合は相続放棄を検討する可能性があると思います。
ですが、相続発生時に負債が見当たらなかったため相続放棄や限定承認の相続手続きをしておらず、後に負債があることが判明したため相続放棄手続きを申し立てる、ということはできるのでしょうか?
これは、相続発生時にどのような行為や手続きをしたかによって異なります。
被相続人の携帯電話の解約賃貸物件の解約等手続きは単純承認事由に相当しますので気を付けましょう

 

⓵財産を受け取った場合や相続財産の処分をした場合
少額であっても財産を受け取った場合や、相続財産を相続人間での分割や処分をした場合、「単純相続」にあたる行為をしていますので相続放棄は認められません。
相続放棄が認められた後に単純相続した事実が判明した場合、却下される可能性が高いでしょう。

 

⓶相続財産が特になく、何も相続せず相続放棄等の手続きもしなかった場合
このような場合でも、
”相続人であると判明してから三ヶ月以内に相続放棄や限定承認手続きを家庭裁判所に申し立てなかった”
という理由から「単純承認」したとみなされてしまいます。
ですが、下記に該当する場合は相続放棄手続きを申し立てれば認められる可能性があります。

  • 何も相続財産を受けとっていなかった
  • 負債があることを知るすべがなかった

この事実を丁寧に説明し、その説明内容を家庭裁判所が吟味し、相続放棄が認められるか否かが決まります。
相続放棄が認められるか否かは裁判所の判断によりますので、認められないケースもあります。

(5)「相続」か「相続放棄」かの判断基準

相続財産に負債がある場合、相続放棄を検討する場合が多いと思いますが、どうしても相続したい財産がある場合、負債があっても相続を検討するケースがあると思います。
相続放棄手続きは1度しか申し立てることのできない手続きです。
相続するのか放棄するのか、法律に詳しくない場合は判断は難しいでしょう。
思いもよらない結果にならないために相続の専門家へ相談し、最善の結果になるように手続きを進めると安心です。

 

⓵「相続」を検討したほうがよいと思われるケース

  • 被相続人の生活状況を普段から知っており負債が無いことがはっきりしている場合
  • 多少の負債が後に発覚したとしても相続財産が十分にあり、支払うことができる場合
  • 自宅不動産を手放したくない場合や、思い入れのある美術品がある場合

このような場合は相続することを検討すべきかもしれません。
負債はあるけれども、どうしても相続したい財産がある場合は相続することで納得できる場合もあります。
ですが、負債があることも含めて納得して相続したとしても、思ったよりもはるかに多額な負債が発覚することもあります。そのような場合もあることを想定して、相続するか放棄するかを決めましょう。
相続したいものと負債が混在しており、負債の方が多い場合は後述します「限定承認」が適している場合もあります。

 

⓶「相続放棄」を検討したほうがよいと思われるケ―ス
死後、被相続人宛の借金の明細書が発覚した場合や、借金があることが判明しているときは相続放棄を検討すべきでしょう。
また、プラスの財産もマイナスの財産も現時点では判明していないが被相続人が自営業を営んでいたことがある場合や、負債や連帯保証債務がある可能性がある場合も相続放棄を検討してもよいかと思います。
後に多額の負債が発覚しても相続放棄手続きをしていますと支払う必要はありませんので安心できます。
相続するのか放棄するのか、被相続人の状況がはっきりしないなどの場合はご自身の相続状況を把握するためにも専門家へ相談し、納得のいく方法で相続手続きを進めると良いでしょう。

相続財産にプラスの財産があり相続したいが負債がある場合は「限定承認」手続きが適している場合があります。
また、プラスもマイナスも財産が特に無いが、後に多額の負債が発覚する可能性がある場合にも限定承認手続きをとると良い場合があります。
限定承認は場合によっては相続人にとってメリットのある手続きです。
一方で手続きが煩雑で、全ての手続きが終了するまで時間がかかるうえに、相続人全員で手続きを申し立てる必要があり、先買権を行使する場合はまとまった資金が必要であるなど、相続放棄よりもハードルの高い手続きになっています。
また、お手続きを専門家に依頼する場合、手続きが煩雑で時間もかかるため、費用は相続放棄よりも高額になります。
手続きが煩雑な上に費用が高額なため、限定承認手続きの申立件数は相続放棄とは比べてかなりの少数であり、またその手続きに長けた専門家も大変希少です。
限定承認手続きはとても煩雑な手続きになりますので、検討する場合は専門家に依頼しましょう。

 

⓵自営業を営んでいた亡夫が多額の負債を残して死去したが、自宅だけは手放したくない場合
限定承認手続きを選択し、申し立て受理後に先買い権を行使して自宅不動産の評価相当額を支払い買い戻すという事が可能です。
ただし、この先買い権を行使するためには、買い戻したい財産評価相当額を相続財産からでなくご自身の財産で支払わなければいけません。

 

⓶財産を相続したくないうえに、次順位にも迷惑をかけたくない場合
財産を相続放棄したいが、相続放棄をすると次順位に相続権が移り迷惑をかけてしまうので困るという場合があります。
そのため、現在の相続人だけでこの相続問題を解決したいという場合は限定承認手続が適しています。
限定承認は全ての相続人で申し立てる必要があります。

 

③相続財産として預貯金があり、負債は現時点で見つかっていない場合
限定承認手続きをしていれば、万が一3ヶ月期限後に莫大な負債が発覚したとしても、最大プラスの財産である預貯金額を上限に支払えばよく、受け取った財産以上に負債を支払う必要はありません。
負債がみつからなかった場合は、プラスの財産である預金をそのまま相続できます。

4.相続放棄手続きで気を付けること・よくある質問

(1)生命保険金・高額療養費の払い戻し

相続放棄を検討している場合の生命保険金を受け取りは、受取人が誰になっているか注意しなくてはいけません。
ほとんどの場合、配偶者や家族の名前が書いてあり、その場合は被保険者の死亡と同時に配偶者や指定された方が受け取る権利を有しますので問題なく受け取れます。
ですが、稀に「被保険者」などとなっている場合があり、その場合は被保険者が死亡し一旦被保険者へ保険金が渡り、その後相続人へ相続されるという流れになりますので受け取ると単純承認事由に該当し、相続放棄申し立てができなくなります
契約内容によっても相続できない場合があるかもしれませんの、契約している保険会社に聞くなどして、単純承認をしないように気を付けましょう。

(2)死亡退職金

どのような社内規定になっているかによります。
「死亡退職金は遺族が受け取る」ということが社内規程に記してあれば、相続放棄手続きをしていても受け取ることができます。

(3)賃貸物件・クレジットカード・携帯電話等の支払い・解約手続きや名義変更

マンションやクレジットカード・携帯電話はたいていの場合本人が契約者になっていると思います。
被相続人が契約していたものの解約手続きは、原則、相続人に限られた行為です。
解約手続きをすることで財産を処分したとされ単純承認事由に該当するとみなされるようなリスクを増やさないためにも、解約手続きや名義変更はしないようにしましょう。
物件の管理会社やカード会社・携帯電話会社には「契約者が死亡し、相続人である自分は相続放棄する予定」だと伝えましょう。

(4)預金の解約・名義変更

上記賃貸物件など度同様、預金口座の解約や名義変更はしてはいけません。
契約者が亡くなったことを伝えると、口座は凍結されます。

(5)債権者への支払い・連絡

被相続人の借金や税金未納等、被相続人の負債は支払う必要はありません。
契約者が亡くなったことを伝え、相続人である自分は相続放棄する予定であることを伝えましょう。
相続放棄が認められているのであれば、相続放棄受理通知書(又は「相続放棄受理証明書」)を債権者に提出し、自分は支払う義務が無いことを伝えましょう。

5.専門家へ依頼するメリットと費用

(1)専門家へ依頼するメリット

①確実性が高い
相続放棄手続きは、限定承認手続きと比べると相続順位によっては比較的容易な手続きではあります。
しかし、家庭裁判所に申し立てる法的な手続きであり、相続放棄をする理由や経緯を不足なく丁寧に説明をしなければ、相続放棄が認められないという事態も否定できません。
ゆえに、専門家へ依頼することは確実性が高く、メリットがあるといえます。

 

②自分の時間が確保できる
相続放棄手続きは自身が相続人になったことを知ってから三ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てなければならず、お葬式や届け出などの手続きであっという間に過ぎてしまうものです。
時間に余裕があり、戸籍収集や相続放棄の申立てをご自身で申し立てることができる方はよいのですが、児や仕事などで多忙な方は専門家へ依頼することで余裕ができ、自分の時間を確保することができます。

(2)費用

①一般的な相場
相続放棄手続きをご自身でする場合は印紙代や戸籍収集費用など安価な費用ですみますが、相続放棄手続きは1度しか申し立てが出来ず、再申請はできない出来ない手続きです。
そのため、確実に相続放棄が認められるように、司法書士や弁護士など相続放棄手続きの専門家に依頼する場合が多いようです。
それぞれの事務所によって値段やサービスは異なりますが、相続放棄申立て(書類収集~手続き完了まで)手続きの費用は下記金額程度のようです。

  • 司法書士 3万円〜8万円程度
  • 弁護士  3万円~10万円程度

相談料は司法書士の場合無料が多く、弁護士の場合相談料5,000円~10,000円/1時間(無料の所もあり)や着手金が必要となる場合があります。
また、第三順位の方が相続放棄手続きを申し立てる場合、被相続人(お亡くなりなった方)とつながりが直系親族に比べて関係が少し遠くなりますので、戸籍謄本の取得に手間がかかります。このような場合は多少費用はかかっても専門家へ依頼すると過不足なく取得することができますので安心です。

 

②特殊な場合
三ヶ月を過ぎてしまった場合や債権者への対応をしてほしい場合などの場合は一般的な相場にいくらか追加で費用を支払い、手続きを依頼できる事務所がほとんどのようです。
サポート内容(戸籍収集・債権者数)や案件の難易度などで費用はかなり変わるようです。

  • ・6万円~18万円程度

三ヶ月を経過した相続放棄手続きは、なぜ三ヶ月経過してしまったのかなどを裁判所へ丁寧に詳しく説明する必要があります
説明が不足した場合、相続放棄が認められない場合もあります。

 

③財産調査が必要な場合
諸々事情により財産調査が必要だという場合は、20万円~30万円程度の費用がかかる場合があります。

6.相続放棄手続きをすることで負債を背負わずに済んだ事例

【出典元】身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」が分かる本P57~P63椎葉基史著

「1年後に発覚した驚愕の事実・ローン残高2,000万円程度を免れた」

ある40代女性Aさんは実家を出てからは、実家の金銭面の管理などには関与しておらず、年2回帰省する程度でした。結婚してからは疎遠になり、自身が体調を崩してからは時折電話で話す程度。実家の事に関しては実家で同居している弟様にまかせていたそうです。
ある年の冬父親が急死。当時Aさんは、父親に借金があるのではということは一切考えませんでした。
ところが1年後Aさんに、某地方裁判所から「担保不動産競売開始決定」の通知が来ました。弟が建てた実家の住宅ローンの返済が滞り、担保となっていた父親名義の不動産が差し押さえられていたという旨です。
司法書士に依頼し不動産登記簿を取得したところ弟が建てた実家が弟名義ではなく父名義になっており、弟と父が共同で借り入れた住宅ローンが滞り、連帯債務者であるお父様名義の不動産が差し押さえられていました。
法定相続により、Aさんは債務者となり、担保に入れられた不動産が競売にかけられ、競売価格がローンの残額を下回れば、債務は残り相続人に支払いの必要が生じてしまうという状況になっていたのです。
父の死から1年が経過していましたが、Aさんはこの通知で初めて不動産名義人や借り入れの事実を知ったことから、3ヶ月の期限を越えていても相続放棄が認められる可能性がありました。
そこで相続放棄のご相談をしたいと当センター(「相続放棄相談センター」)へ来所され、詳しくお話をお伺いしました。
そして裁判所にこれまでの経緯を丁寧に正確に説明し、「自分が相続人になったと知ったのは、某地方裁判所から「担保不動産競売開始決定」の通知を受けた時点であり、その時点を起算とした期限内の相続放棄であるとして無事相続放棄が認められました。

7.まとめ

以上相続放棄とそのメリット・デメリットついて述べてきました。
最大のメリットは負債(借金など)の責任から逃れられるという点です。
しかしながらこの相続放棄という方法は、完璧な手段ではなく、場合によっては相続放棄をしないほうがよかった、という場合もあるかもしれません。
デメリットや手続きの注意点なども鑑みながら、総合的に判断をして相続手続きをすすめましょう。
ご自身の現在の状況を把握し、相続放棄をすることでどのような結果になるかを的確に想像することは法律手続きに慣れていない方には大変困難です。
相続放棄手続きは一度しか申し立てることのできない法的な手続きですので、ご自身の希望に沿った結果になるためにも専門家へ相談することをお勧めいたします。

 

 

この記事を書いた人
まつだ りょうすけ
松田了介

司法書士(大阪司法書士会 第4902号、簡裁訴訟代理関係業務認定第1612053号)
司法書士法人ABC社員
行政書士有資格
大阪府堺市出身
桃山学院高等学校・同志社大学法学部卒業
世界最大手の国際物流サービス会社であるフェデックスに24年間勤務。グローバルセールスとして物流価値を創造するソリューションを提案、企業のグローバルビジネスをサポート。
以前より中小企業の事業承継や相続の仕事に携わりたいと考えており司法書士になることを決意。
平成28年に司法書士試験に合格し、フェデックス退職後、司法書士法人ABCへ入社。
日々寄せられる事業承継や相続の相談について丁寧に対応、現状を把握し、最適な解決方法を提案。
お客様にご納得いただける手続きを提供すべく、知識の研鑽に努めている。

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