葬儀保険(少額短期保険)とは?選び方や注意点も解説

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葬儀保険(少額短期保険)とは?選び方や注意点も解説

人がこの世を去る時何を思うか。幼い頃の出来事や学生時代の思い出、大変だった会社での仕事、結婚生活、子供の誕生、孫の誕生・・・と時代時代の大きなイベントごとが走馬灯のように頭を駆け巡るのかもしれません。それはきっと至福の瞬間なのでしょう。

とはいえ、きっとそれだけではないはずです。より現実的な、自分の死後に家族が幸せに暮らしていけるか、と家族を慮ることもあることもあると思います。その思考からさらに具体的な心配事に行き着くことだってあるかもしれません。

それは自分のお葬式です。一般的に葬儀費用は数十万円〜百数十万円、大掛かりな葬式であれば天井知らずのお金が出ていきます。一般家庭の財政にとっては大きな負担です。

自分の葬式のために残された家族や相続人が大きな財政的負担を強いられることになる、と考えるとやりきれない気持ちになる方も多くいらっしゃるでしょう。

もちろん死を迎える前に家族に、葬式は大規模な葬儀場を使うのではなく家族葬のような簡易的なもので良い、と伝えておけば家族の負担も軽減されるでしょうが、一方でそこは自分の希望を優先させたいという気持ちもあります。死を前にして自分の気持ちを偽るのはあまりにも辛い。

家族の財政的負担をできるだけ軽減させて、なおかつ自分の希望する葬式を執り行ってもらう、そのためにはどうすれば良いか。

そんな時には葬儀保険への加入という手段が適切です。葬儀保険は葬儀に特化した保険であるため保険料が少額で、葬式にかかる費用を大きく賄うことが可能です。

今回はそんな葬儀保険について解説いたします。

1.葬儀保険とは

葬儀保険についての解説をする前に、まず少額短期保険について簡単に解説いたします。少額短期保険とは、一定の事業規模の範囲内で、掛金が低く保障期間が短い保険のみを行なう事業を言い、またそれらを取り扱う事業者のことを言います。「ミニ保険」とも言われます。

かつては法的根拠のない無認可共済が横行しており、それによる問題が多発していました。それらに代わる保険として誕生したのが少額短期保険です。

掛金が低く保障期間が短い保険ではありますが、だからこそ様々な分野での応用が可能であり、各種の特徴ある少額短期保険商品が存在しています。

例えば、ペット保険です。一般的にペットにかかる治療費は保険が効かないため高額になりますが、ペット保険への加入によってペットの怪我や病気で発生する治療費などを賄うことができます。愛犬家や愛猫家の間で人気の高い保険です。

また近年では自転車保険の加入者が増えています。自転車走行時の怪我や事故の際の費用を賄うことができる保険であり、自転車通勤者に対して加入を義務づける会社もあります。

他にも登山保険やネットトラブル保険など、時勢に合わせた様々な短期少額保険が存在します。

葬儀保険はそんな中の1つです。保険期間は1年、月々の保険料は平均すると千数百円であり、負担が軽いため誰でも加入しやすい手頃な保険です。

葬儀保険で支払われる保障金額は最大で300万円までであり、葬儀費用の全額、もしくは一部に充てる金額としては十分と言えるでしょう。

2.生命保険との違い

では、一般の生命保険と葬儀保険とでは何が違うのでしょうか。それぞれの概要について以下に説明いたします。

生命保険は死亡保険とも言われ、加入者の死亡時に保険金が支払われる仕組みですが、それ以外にも様々なサービスがあります。怪我や病気で入院した時の入院保険、ガンを患った時のガン保険、死を迎えるまで手厚い補償を受けることができる終身医療保険など、加入者の実情にあった様々な保険商品が含まれており、その中に葬儀保険を含めることもできます。

つまり、生命保険と葬儀保険では扱うサービスに大きな違いがあるということになります。

また、それを取り扱う事業者も異なります。生命保険を扱う事業者は免許制であり、ある一定規模以上の資本金を有するなどの厳しい審査があります。

一方の葬儀保険は少額短期保険に該当し、こちらは登録制です。1000万円の供託金で開業することができるため多くの事業者が参入しています。ただし取扱商品は限定されます。

生命保険は限定なしで様々な商品を取り扱うことができますが、葬儀保険は少額、短期、掛け捨てに限定され保険金額は最大で300万円、保険期間は1年です。

前述したように、生命保険のサービスの1つとして葬儀保険が組み込まれることもあるため、葬儀保険が生命保険の一種という見方もできるのです。

3.葬儀保険の必要性

生命保険と葬儀保険との違いについてお話いたしましたが、近年は多くの方が生命保険に加入しています。よって加入者の死亡時にはまとまった額の保険金が支払われ、そこから葬儀費用を賄うことは容易です。

ただし、何らかの事情でそのような準備ができない方も、十分な預金がない方も一定数いらっしゃいます。

「これまで家族には迷惑をかけてしまった。家族へのマナーとして自分の葬儀の費用くらいは自分で支払って、家族の負担を軽減させたい。」

例えばこのように考える方にとって少額で申込み、手続きができる葬儀保険は最適です。

もちろん資産を残している方であっても、自分の葬儀費用は別で支払いたいと希望されるのであれば葬儀保険の必要性は高まるでしょう。

4.葬儀保険の選び方

では、どのようにして葬儀保険を選べば良いのでしょうか。ここでもまた生命保険が比較対象となりますが、葬儀保険と生命保険のメリットとデメリットを比較してみましょう。

(1)葬儀保険のメリットとデメリット

まず葬儀保険は少額短期保険に分類されるため月々の保険料は割安です。また加入にあたり医師の診断書も不要で、持病があっても問題ないケースもあります。80歳以上の高齢者で終活をせずに自身の葬儀の準備をしなかった方であっても、加入できる可能性があります。つまり、加入のハードルが非常に低い点が大きなメリットです。

また葬儀保険の場合、契約者の方が亡くなり必要書類を送付すればすぐに保険金を受け取ることができます。葬儀での支払いに間に合わせることができる点もまた大きなメリットです。

一方のデメリットは保険料が掛け捨てという点です。掛け捨てであるため、仮にお客様が途中で解約したとしても解約払戻金などはありません。また保障期間は1年間と短期間です。とはいえ、1年ごとに保険の見直しができるという意味でメリットと捉えることもできます。

保険金額は最大で300万円です。比較的低額でありこれもまたデメリットに違いはありませんが、葬儀に特化する保険と捉えれば、大きなデメリットではないかもしれません。

(2)生命保険のメリットとデメリット

生命保険メリットとデメリットは葬儀保険とは相対するものになります。生命保険の月々の保険料は高く設定されおり、また申込みには医師の診断書が必要になります。また持病をお持ちの方は加入できない可能性があり、年齢制限も設定されています。葬儀保険と比較すると加入のハードルは高いと言えるでしょう。

生命保険の場合、保険料は掛け捨てではなく貯蓄型であり、解約時には解約払戻金としてまとまった金額を受け取ることができます。また、保険商品次第では医療保険による保障やサポートが一生涯続くものもあり、大きな安心感を得ることができます。

このように、葬儀保険と生命保険のメリットとデメリットをよく理解し、双方をうまく噛み合わせるように利用することが大切です。

ただし、すでに加入している生命保険のサービスに葬儀保険か、それに準じた特約が含まれている可能性もあるので、今一度ご自身が加入している生命保険の資料を確認するか、担当営業に電話で確認してみましょう。その上で新たに葬儀保険に加入するかどうかを検討してもいいでしょう。

新たに葬儀保険を申込む場合、事業者選びは重要です。事業者のホームページやネット上で掲載された口コミを参考にすることも1つの手段ですが、役所などから事業者を案内してもらう方法もオススメです。

5.保険料の相場

前述したように葬儀保険の月々の保険料は比較的割安です。プランにもよりますが、概ね750円から2500円が相場になります。なお、契約者が死亡時に支払われる保険金は、300万円を上限として150万円、200万円が設定されます。

また生命保険のように多くのプランやコースが用意されている訳ではありません。葬儀保険は、大きく分けて「保険金固定」と「保険料一定」の2種類です。以下に説明いたします。

(1)保険金固定タイプ

こちらは受け取れる保険金が変わらないタイプです。月々の保険料は年齢とともに増えていきますが、死亡時に受け取れる金額は一定です。

(2)保険料一定タイプ

こちらは年齢とともに受け取れる保険金が減っていくタイプです。契約者が毎月支払う保険料は、契約者が死亡するか上限の年齢に達するまで変わりません。

6.持病がある場合も加入できるか

基本的に葬儀保険の加入にあたり医師の診断書は不要です。従って、契約者が持病をお持ちでも加入しやすくなっています。とはいえ、どんな持病であっても加入できるかというとなんともいえません。加入条件や方法は葬儀保険を扱う事業者ごとに異なります。詳しい条件や加入までの流れについて事業者に相談してみましょう。

7.葬儀保険に加入する際の注意点

生命保険と比較すると加入へのハードルが低い葬儀保険ですが、注意点が4つあります。以下に4つの注意点について説明しますので、加入の際の参考にしてください。

(1)課税対象になる

これは葬儀保険に限ったことではありませんが、死亡時に支払われる保険金は課税対象となります。この時に支払われた保険金にかかる税は、保険料の支払い者や保険金の受取人が誰になるかによって種類が変わるため、どういう状況でどういう税が適用になるのか、あらかじめ葬儀保険の事業者に確認しておきましょう。

ほとんどの場合、所得税、贈与税、相続税のいずれかになりますが、相続税であれば非課税枠として計上できる可能性があります。

(2)健康状態の告知義務がある

医師の診断書や健康状態に関する告知書には告知義務が設定されています。虚偽の記載をすれば契約解除に事由になる、保険金が支払われないなどのペナルティーが科せられることになります。基本的に葬儀保険の加入時に医師の診断書や告知書が請求されることはありませんが、事業者次第では提出が必要になることもあります。

(3)高齢になればなるほど保険料が高くなる

5.保険料の相場 でもお話しましたが、基本的に高齢になれば保険料は高くなります。これは生命保険でも同様で、高齢になれば保険金が支払われる可能性が高くなるためです。

なお、保険料一定タイプの葬儀保険を選べば月々の支払額は一定ですが、高齢になれば支払われる保険金は減っていきます。

(4)保険金が受け取れないケースがある

前述した告知義務違反がこれに該当しますが、他にも4つ事由があります。以下の通りです。

  • 保険金の受取を目的とした被保険者の死亡の発覚
  • 被保険者の意思を無視した強制的な保険契約締結の発覚
  • 上限年齢を超えたことによる契約の失効
  • 保険契約関係者の反社会勢力への所属

他にも月々の保険料の支払いが滞れば保険金が受け取れない可能性が出てきます。ただし、災害発生などで災害救助法が適用された地域にお住いの方については、月々の保険料の支払い猶予期間が設けられることがあります。

まとめ

家族の1人が亡くなった時、遺族は悲しみにくれるばかりでなく、数々の葬式の準備に追われることになります。葬式後も役所に提出するための書類を作成、銀行口座の名義変更、相続財産の名義変更など多くの雑務をこなさなくてはなりません。

また被相続人の死は、相続人の人生の大きなターニングポイントとなり得ます。被相続人の死はすなわち相続開始の時でもあり、そこから相続人として数々の手続きをこなし、また数々の決断をしていくことになるのです。

1人の死、被相続人の死は、家族にとってあまりにも大きな出来事です。

そのため死を迎えようとする者が、残された家族の葬式や死後事務の手間をできるだけ軽減させるべく終活を行なうことは、残された家族に対する最期の思いやりではないでしょうか。

葬儀保険の加入もまた終活の中の1活動であり、家族の負担を大いに軽減させることになります。

事前に自分の葬儀費用を準備しておき、自分ができる範囲の手続きを済ませておく。それは家族のためでもありますが、むしろこれから死を迎えようとする自分が心置きなくあの世へ旅立つための儀式でもあるかもしれません。終活は自分のために行なう活動なのです。

この記事を書いた人
しいば もとふみ
椎葉基史

司法書士法人ABC
代表司法書士

司法書士(大阪司法書士会 第5096号、簡裁訴訟代理関係業務認定第612080号)
家族信託専門士 司法書士法人ABC代表社員
NPO法人相続アドバイザー協議会理事
株式会社アスクエスト代表取締役
株式会社負動産相談センター取締役

熊本県人吉市出身、熊本高校卒業。
大手司法書士法人で修行後、平成20年大阪市内で司法書士事務所(現 司法書士法人ABC)を開業。
負債相続の専門家が、量においても質においても完全に不足している状況に対し、「切実に困っている人たちにとってのセーフティネットとなるべき」と考え、平成23年に相続放棄専門の窓口「相続放棄相談センター」を立ち上げる。年々相談は増加しており、債務相続をめぐる問題の専門事務所として、年間1400件を超える相談を受ける。
業界でも取扱いの少ない相続の限定承認手続きにも積極的に取り組み、年間40件程度と圧倒的な取り組み実績を持つ。

【 TV(NHK・テレビ朝日・フジテレビ・関西テレビ・毎日放送)・ラジオ・経済紙等メディア出演多数 】

■書籍  『身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」が分かる本』(ポプラ社)
 ■DVD 『知っておくべき負債相続と生命保険活用術』(㈱セールス手帖社保険 FPS研究所)

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