自己破産すると家族はどうなる?影響すること、しないことを分かりやすく解説

自己破産すると家族はどうなる?影響すること、しないことを分かりやすく解説

多くの人が抱える借金問題。その最終手段とも言える自己破産ですが、自己破産を決断する前に心配なのが家族への影響です。

自己破産を申し立てると、どういった変化が家族に及ぶのか、逆にどのようなことなら影響がないのかを詳しく解説します。

自己破産した人の末路 自己破産した人の末路とは?自己破産するとその後の生活はどうなる

影響あり?自己破産すると家族はどうなるのか

影響あり?自己破産すると家族はどうなるのか

自己破産は、借金を全額免除する法的な手段であり、多くの人にとっては負債の圧力から解放される重要な手続きです。

しかし、この手続きは自分だけでなく、家族にも大きな影響を及ぼします。

持ち家をはじめ資産の大部分を失う

自己破産すると、債務者の資産は原則として全て破産管財人によって売却され、売却した金額が債権者に分配されます。

これにより、持ち家や土地、株や金融資産などの大部分を失う可能性があります。ただし、必要最低限の生活用具や衣類などは保全されるので、全てを失うわけではありません。

自動車がなくなり生活に不便が生じる

自己破産すると、所有する自動車も売却対象となります。これにより、自動車を日常生活で必要とする家族は大きな不便を強いられることがあります。

しかし、仕事や通院など、生活に必要な理由がある場合、特別に自動車を保全することが認められることがあります。

20万円以上の預金を残せなくなる

自己破産を申し立てる際には、破産者の全ての財産が清算の対象となります。これには、銀行口座にある預金も含まれます。

法律により、生活費として最低限必要な額(通常は約20万円)を残すことは可能ですが、それを超える金額は全て清算され、債権者への返済に充てられます。

家族が保証人の場合は返済義務がある

自己破産をした場合でも、あなたの借金の保証人になっている家族には引き続き返済義務が生じます。

自分が全額免除を受けたとしても、保証人として署名した家族は債権者から返済を請求される可能性があります。

解約返戻金が20万円を超える保険は解約される

生命保険や学資保険など、解約返戻金が20万円を超える保険は資産とみなされ、強制的に解約される可能性があります。

これは家族の保障に対して直接的に影響します。

本人名義で作った家族カードが使えない

自己破産をすると、本人名義で作成したクレジットカードは全て利用できなくなります。

そのため、本人名義のカードで発行された家族カードも使用できなくなります。

他人の保証人になれない

自己破産すると、破産宣告から5年間は他人の保証人になることが法律で禁じられています。

これは、他人が借入れをする際に困難になるという直接的な影響を家族に及ぼす可能性があります。

自己破産しても家族に影響がないこと

自己破産しても家族に影響がないこと

自己破産すると多くの変化が訪れますが、全てがマイナスであるわけではありません。具体的には、以下の要素が家族に直接的な影響を及ぼさないことが挙げられます。

家族名義の財産は守られる

自己破産を申し立てると、財産はすべて破産管財人によって管理され、債権者への返済に充てられます。しかし、自分名義でない家族の財産は守られます。

たとえば、配偶者名義の預金や家族名義の不動産などは、あなたの借金の返済には使われません。

家族の進学・就職・転職は関係ない

あなたが自己破産をしたことは、家族の進学・就職・転職には一切影響しません。

自身の信用情報と家族の信用情報は別であり、あなたの破産が家族の信用スコアに影響を及ぼすことはありません。

家族の結婚に影響はない

自己破産した人の家族が結婚する際に、その事実が結婚相手に伝えられることはありません。法的には、自己破産者の家族が結婚する際に何らかの障害となる要素は存在しません。

信用情報機関に家族の名前が載ることはない

信用情報機関には、各人の個人信用情報が集められ、金融機関やクレジットカード会社などが利用します。

自己破産をすると、その事実が信用情報機関に記録され、一定期間(通常は5年から7年)の間、新たにクレジットカードを作るなどの信用取引が難しくなることは確かです。

しかし、その情報は自己破産をした本人に関するものであり、家族の名前が登録されることはありません。

生活に必要な家具・家電類は残せる

自己破産の手続きでは、債権者への返済のために財産が清算されますが、全てが無くなるわけではありません。

生活を維持するために必要な家具や家電、衣服などは基本的に手放す必要はありません。これには、ベッド、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、パソコン等の家電が含まれます。

99万円以下の自身の現金は残せる

自己破産をすると、多くの財産を失うことになりますが、一定の額以下の現金は残すことが可能です。

一般的には、自己破産者本人が保有する現金で99万円以下のものは、破産管財人から没収されません。

これは、自己破産後も基本的な生活を営むために設けられた制度であり、これにより生活再建が可能となります。

戸籍や住民票に記載されることはない

自己破産したことが戸籍や住民票に記載されることはありません。

したがって、家族が新たに住宅ローンを組んだり、クレジットカードを作成したりする際に、あなたの自己破産が問題となることはありません。

子供が親の代わりに取り立てされる心配はない

自己破産者の子供が親の借金を返済する義務はありません。親が自己破産したからといって、子供が取り立ての対象となることはないのです。

ただし、親が自己破産する前に子供が連帯保証人としてサインした契約については別です。そのような場合、子供が返済義務を負うことになりますので注意が必要です。

家族に内緒で自己破産を行うことはできるのか?

自己破産を行う際、家族に知られずに進行することが可能なのか? 自己破産は個人に関わる法的手続きですが、同居の家族とは切り離せない面もあります。

郵送物や自宅・車の差し押さえによりバレる

自己破産の手続きには、裁判所からの郵送物が自宅に届くという流れがあります。また、債務者の資産である自宅や車の差し押さえが行われることもあります。

そのため、同居の家族がいる場合、自己破産を完全に秘密にすることは非常に困難です。

配偶者には収入証明が求められる

配偶者の収入に関する情報提供が求められる場合もあります。生活費の算出や裁判所による破産宣告の可否判断のため、債務者だけでなく配偶者の収入情報も必要となるためです。

配偶者には、収入証明書の提出を求められることがあり、その際に自己破産の手続きが進行中であることが明らかになる可能性があります。

未成年が申し立てする場合は親の同意が必要

未成年者が自己破産を進めるには親の認識と承認が必須となるため、家族に知られずに自己破産を行うことは、実質的に不可能といえます。

一人暮らしならバレずに自己破産できる可能性がある

一人暮らしの場合、自己破産手続きを家族に知られずに進めることは可能です。裁判所からの郵送物は直接自分の住所に届きますし、差し押さえも自分だけが把握していれば問題ありません。

家族と同居中ではない場合、家族にバレる可能性は少なくなります。

しかし、一人暮らしの場合でも、支払い計画を立てたり、手続きを進めたりする際には、家族との連絡が必要になることがあります。必ずしも全てを秘密にできるとは言い切れません。

専門家から一言

自己破産を家族に内緒で進めることは可能かもしれませんが、多くの配慮が必要です。家族を巻き込む可能性のある決定を下す前には、できるだけ家族と話し合うことをお勧めします。

家族に迷惑をかけずに自己破産するには?

自己破産をする際には、その影響が家族に及ばないよう配慮することが重要です。以下では、家族に迷惑をかけずに自己破産を進めるための注意点について詳しく解説します。

財産隠しは絶対に行わない

自己破産を申し立てる際には、自身の財産を全て正確に申告することが求められます。

財産を隠し、その事実が後で発覚した場合、法的な罰則を受けるだけでなく、破産手続き自体が取り消されることもあります。

また、家族が財産隠しに加担したことが発覚した場合、家族が法的な責任を問われる可能性もあります。このようなリスクを避けるためにも、財産隠しは絶対に避けるべきです。

偏頗弁済(へんぱべんさい)に注意する

偏頗弁済とは、特定の債権者だけに多額の返済を行うことを指します。これが行われた場合、他の債権者は不公平に扱われたと感じます。

特に自己破産を申し立てる前の1年以内に偏頗弁済が行われた場合、その債権者から弁済した金額を返還請求される可能性があります。

家族がその債権者であった場合、家族に返済を求められる可能性もあります。そのため、自己破産を考えている人は、偏頗弁済に十分注意する必要があります。

離婚による財産分与は財産隠しと見られる可能性があるので注意

自己破産を申し立てる前に離婚をし、その際に大量の財産を配偶者に譲渡すると、それは財産隠しと見なされることがあります。

特に破産申立前の3年間に行われた場合には注意が必要です。

財産移転が悪質と疑われた場合は、離婚による財産分与が取り消され、元の配偶者に対して返還を求められる可能性があります。

このような事態に陥ると、家族に大きな負担や困惑をもたらすでしょう。また、不適切な財産移転があったとされると、自己破産手続き自体が遅れるなどのデメリットもあります。

専門家から一言

家族に迷惑をかけずに自己破産をするためには、適切な法的手続きを進め、全ての財産の申告や適切な返済行為を心掛けることが大切です。また、離婚などの大きな生活の変化がある場合には、その影響をしっかりと理解し、法的な問題を生じさせないように注意する必要があります。

【自己破産以外】家族の負担を減らすことができる債務整理の手段

【自己破産以外】家族の負担を減らすことができる債務整理の手段

家族に対する影響を最小限に抑えつつ、自身の借金問題を解決したいと思っている方に向けて、自己破産以外の債務整理の手段を紹介します。

個人再生

持ち家を失わずに借金返済ができる

個人再生は、持ち家を失うことなく、かつ、返済額を大幅に減らすことが可能な債務整理の手段です。これは法律に基づいた手続きで、裁判所の認可を得ることで実施できます。

裁判所は借り手の収入や生活費を考慮し、合理的な返済計画を立てます。これにより、借り手は自己の生活を維持しつつ借金を減らすことができます。

個人再生ができる人

  • 債務者本人が自営業者、フリーランス、個人事業主、又は、雇用者であること
  • 申立人の総負債額が個人再生法に定められた上限額以下であること
  • 住宅ローンなど特定の負債を除いた債務の合計が一定額以下であること
  • 過去5年間に自己破産、または個人再生の申立てが認可されていないこと
  • 未来の安定した収入により、新たな返済計画に基づいて債務の返済が可能であること

任意整理

特手の債権者と交渉できる

任意整理は個人再生とは異なり、裁判所を通さずに債権者と直接交渉する手法です。この方法は個々の債権者との契約に対して行うため、全ての債務に対して行うわけではありません。

任意整理では、返済額の減額や返済期間の延長など、債権者との合意に基づいて返済条件を再設定します。

これにより、返済の負担を軽減しつつ、借り手と債権者双方が納得のいく解決を図ることができます。

任意整理ができる人

  • 債務の全額返済が困難であるが、一部の返済は可能であること
  • 債権者との交渉により返済条件を変更できる可能性があること
  • 債務総額が自身の収入や資産から見て明らかに過重であること
  • 任意整理を行っても生活を維持できるだけの収入があること

まとめ

自己破産は、家族にも大きな影響を与える可能性があります。資産の大部分を失うこと、生活の不便が生じること、保証人としての返済義務など、多くの変化が生じます。

しかし同時に、家族名義の財産は守られる、家族の進学・就職・転職や結婚に影響はないなど、自己破産が家族に与える影響は限定的であることも理解しておきましょう。

家族に迷惑をかけずに自己破産するためには、財産隠しや偏頗弁済(へんぱべんさい)を避け、財産分与も慎重に行うことが必要です。