債務整理は、経済的に困難な状況にある人が状況を改善できる法律で認められた手続きです。「債務整理をする人はクズ」、そんな風潮や偏見は大きな誤解です。
債務整理を検討することは、自身の財政状況を認め問題に対処しようとする行為であり、真摯に問題解決に取り組もうとしている前向きな姿勢の表れです。
この記事では、債務整理が「クズ」ではない理由を詳しく解説します。

目次
「債務整理=クズ」は大間違い

「債務整理をする人は、お金をきちんと返せないクズだ」と思い込んでいる人もいるかもしれません。しかし、それは大きな誤解です。
社会に存在する偏見と誤解について
借金問題は、世界中の多くの人々が抱えるリアルな問題です。
しかし、時としてこれを深刻に受け止めず、負債を持つことや債務整理をすることを「クズ」といった否定的な言葉で表現する風潮が存在します。
これは、借金が個人の道徳的欠陥や能力不足を示すという誤った偏見からくるものです。また、債務整理を行う行為を「責任逃れをしている」と非難する人々もいます。
これらの見解は、債務問題の本質や目的を理解していないことが原因です。
債務整理を検討することは問題解決への第一歩
「借金を整理したい」と考えはじめた時点で、あなたは問題解決に向けて大きく前進しています。
債務整理を検討中の人の中には、「自分はダメな人間だ」と自己嫌悪に陥っている人もいるかもしれません。しかし、大切なのはどう対処するかです。
例えば、次のような行動は大きな一歩と言えるでしょう。
- 借金の総額や返済状況を正確に把握する
- 債務整理の種類や手続きについて情報収集する
「借金を何とかしたい」と思えることは、希望の光が灯っている証拠です。その思いを大切にし、具体的な行動につなげていきましょう。
真剣に向き合う姿勢は評価されるべき
借金の存在に目をそむけるのではなく、真正面から向き合う勇気を持ったことは評価されるべきこと。
借金を抱えることは、必ずしも個人の道徳的欠陥を示すものではなく、時には避けられない事情や不運な状況から生じることがあります。
そうした状況下で、法的な手段を利用して自身の問題を解決しようとする人々を、社会全体が理解し支えるべきです。
自己嫌悪に陥る必要はない
借金をしている人の中には、「自分は無能だ」「性格に問題がある」と自分を責める人もいます。しかし、借金の理由は人それぞれです。決して自分を卑下する必要はありません。
多重債務に陥る理由としては、以下のように様々です。
- 収入の減少
- ギャンブルなどに浪費
- 病気やケガ
- 事業の失敗
収入減や病気など、自分の力ではどうしようもない事情で借金を抱えることもあります。「自己責任だ」と自分を責めるのは適切ではありません。
また、ギャンブル依存症など、病気が原因で借金を重ねる人もいます。
借金の原因を冷静に見つめ直し、前向きな解決策を探ることが大切です。自己嫌悪に苛まれている人は、まず自分を許すことから始めてみてはどうでしょうか。
債務整理は法律によって保証された権利
債務整理をすることが「クズ」ではない一つ目の理由は、それが法律によって保証された個々の権利であるという事実です。
法律は、借金により生活が困難な状況に陥った人々に対し、その状況を改善するための様々な手段を提供しています。その一つが債務整理です。
債務整理を利用することは、自己の法的権利を行使する行為であり、それ自体は何ら恥ずべきものではありません。
「逃げる」行為ではなく「解決する」行為
債務整理は、経済的な問題を解決するための具体的な手段です。多くの人々が、予期せぬ事情や経済的な困難により、返済が難しくなることがあります。
債務整理を行うことで、借入れの返済計画を再設定し、現実的な返済スケジュールを作成することが可能となります。これは「逃げる」行為ではなく「解決する」行為です。
家族に理解してもらうには
債務整理をすると決めても、家族にどう伝えたらよいか悩む人は少なくありません。しかし、債務整理は家族みんなに関わる問題です。
現状を正直に伝える
借金の原因や現在の借金額、返済の見通しなどを、ありのままに伝えましょう。隠し事をせずに正直に話すことで、家族の信頼を得られるはずです。
債務整理の目的を説明する
債務整理によって借金を減らし、生活再建を目指すのだと伝えましょう。ギャンブルなどで借金をしたことを反省し、二度と繰り返さないと誓うことも必要です。
生活への影響を具体的に説明する
債務整理による家計の変化を具体的に伝えましょう。支出をどこまで抑える必要があるのか、子供の教育費についてはどう工面するかなど、家族で知恵を出し合いましょう。
家族の不安に耳を傾ける
借金のことを知った家族は不安を感じるでしょう。家族の思いに耳を傾け、精一杯寄り添う姿勢を見せることが大切です。
専門家に相談することが大事
借金問題を抱えると、一人で悩みを抱え込みがちです。周囲に知られるのが恥ずかしいという思いもあるでしょう。しかし、借金問題の解決には専門家の力を借りることがとても重要です。
債務整理に詳しい弁護士や司法書士は、あなたの状況をしっかりと受け止めてくれる心強い味方となってくれるはず。現状打開のための的確なアドバイスをしてくれるでしょう。
具体的なメリットとして以下のようなものがあります。
法的に保護される権利を知ることができる
借金の取り立てでひどい嫌がらせを受けている場合でも、法的に保護される権利があります。専門家はそうした権利を教えてくれるでしょう。
適切な債務整理の方法を提案してもらえる
個人の状況に合わせて、任意整理、個人再生、自己破産など最適な債務整理の方法を提案してもらえます。
債権者との交渉を代行してもらえる
弁護士などが間に入ることで、債権者との交渉もスムーズに進められます。
信頼できる専門家を見つけることが難しいと感じる人もいるかもしれません。その場合は、以下のような方法で探してみるのも良いでしょう。
- 法テラスに相談する
- 各地の弁護士会に問い合わせる
手前味噌ですが、当サイトおすすめの債務整理に強い弁護士も参考にして下さい。
債務整理の主な手段
債務整理には複数の方法がありますが、その中でも任意整理、個人再生、自己破産が主な手段です。
それぞれに特性や適用条件が異なるため、自身の状況や目標に応じて適切な手続きを選択することが重要です。
以下にそれぞれの特徴を簡単にまとめた表を示します。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
---|---|---|---|
適用対象 | 比較的債務額が少ない人 特定の債務のみ整理したい人 |
定期的な収入があり 大量の債務を一括で整理したい人 |
債務の返済が全くできない人 |
特徴 | 債務全体を一括ではなく個別に交渉 返済計画を立てる |
法的に保護された再生計画を作成し、 全体の債務を再編成 |
全ての債務を免除させるが、 一定期間信用情報に記録が残る |
手続きの流れ | ①債権者との交渉 ②返済計画の作成 ③返済の実行 |
①再生計画案の作成 ②裁判所への申立て ③裁判所の審査と認可 ④再生計画に基づいた返済 |
①破産申立て ②裁判所の審査 ③破産宣告と債務放棄 |
任意整理
任意整理は、借金が複数ある場合に、一部の借金だけを対象にすることが可能な債務整理の手法です。具体的には、借入先と直接交渉を行い、返済計画を立てます。
任意整理を行った場合でも、他の債務に対する返済義務は続きます。任意整理は、破産手続きを避けることが可能で、信用情報機関への登録期間も短いというメリットがあります。
メリット
- 手続きが簡易で費用が比較的安い
- 個人信用情報に登録される期間が短い
デメリット:
- 減額に応じてもらえるかは債権者次第で、必ずしも思い通りの結果にならない
- 住宅ローンの減額は原則としてできない
- 借金の支払いが継続し、返済期間が長期化するとトータルの返済額が増える可能性がある
- 任意整理は取り組みやすいが、減額効果や対象債務の範囲に限界がある
個人再生
個人再生は、安定した収入があるにもかかわらず借金の返済が困難な状況にある個人が利用できる法的な手続きです。
債務者は裁判所へ申立てを行い、自身の収入や資産、生活費などを考慮した上で、裁判所が認めた再生計画に基づいて債務を返済します。
この手続きにより、債務を一部免除したり、返済期間を延ばしたりすることが可能です。
特に住宅ローンなど担保付き債務の返済が困難な場合や、大量の債務を一括で整理したいときに適しています。
メリット
- 借金を大幅に減額できる
- 3年間で完済可能
- 利息の支払い義務が免除される
- 住宅ローンを継続し、自宅を手放さずに済む
- 債権者の同意なしに強制的に減額できる
デメリット
- 手続きに一定の費用がかかる
- 個人信用情報機関に5年から10年程度登録され、信用面で不利益を被る
- 一定の収入要件があり、定期的な収入がない場合は利用が難しい
- 返済中の高価な物が処分される可能性がある
- 保証人が借金を肩代わりする場合がある
自己破産
自己破産は、返済が絶対に不可能な状況にある場合の最終的な選択肢とされています。自己破産を申請すると、裁判所が破産を宣告し、その結果、全ての債務が法律上免除されます。
ただし、自己破産は信用情報に長期間記録され、その期間中は新たな借入れが困難になるなど、深刻な影響を及ぼします。
そのため、他の手段で解決が不可能な場合に限って選択されるべきです。
メリット
- 借金が全額免除され経済的に再スタートが可能
- 定期的な収入要件が厳しくない
デメリット
- 破産の事実が個人信用情報に10年間登録される
- 一定の財産を処分する必要がある
- 保証人や連帯保証人に影響が及ぶ可能性がある
債務整理を早期に行うメリット
借金が積み重なってしまった時、自分でどうにかしようと頑張ってみても、利息が膨らんでさらに状況が悪化することが少なくありません。
債務整理はタイミングも重要で、早期に行うことが望ましいです。
利息による借金増加を防ぐ
債務があると、毎月の返済額だけでなく利息も膨らんでいきます。これは借金が増える一因となり、早期に債務整理を行わないと借金が雪だるま式に増える可能性があります。
債務整理を早期に行うことで、利息による借金増加を防ぐことができます。
精神的な負担が軽減される
借金があることを気にして、日々の生活にストレスを感じることもあるでしょう。
債務整理を早期に行うことで、精神的な負担を軽減することができます。
債権者との関係が改善する
債務整理を早期に行うと、債権者との関係も改善する可能性があります。
早めに手続きを行うことで、債権者もその意欲を理解しやすく、返済計画に協力的になることが期待できます。
専門家から一言
債務整理の注意点
債務整理は、手続きを行う前に理解しておくべき注意点があります。
信用情報機関へ登録される
債務整理を行うと、その事実は信用情報機関に登録されます。このため、一定期間新たな借入やクレジットカードの利用が制限されることがあります。
また、それが原因で住宅ローンの取得が難しくなる場合もあります。
費用がかかる
債務整理には弁護士や司法書士などの専門家に依頼することが一般的で、そのための費用が必要となります。
費用は状況や手続きの内容によりますが、数十万円程度かかることがあります。
手続きに時間がかかる
債務整理の手続きは、一般的に時間がかかります。任意整理や個人再生の場合でも、全ての債権者との交渉が完了するまで数ヶ月から1年程度は必要とされます。
その間、返済がストップすることはありますが、手続きが終わるまでの生活設計も重要となります。
気にしなくてもいい債務整理に関する誤解
債務整理について誤った認識を持っている人は少なくありません。以下に、よくある誤解を3つ挙げてみました。
家族や恋人に迷惑がかかる
債務整理をすると、家族や恋人に迷惑がかかると思っている人がいます。しかし、これは大きな誤解です。
債務整理は個人の問題であり、その手続きは債務者と弁護士や司法書士、そして債権者だけに関わるものです。家族や恋人が迷惑を被ることは一切ありません。
また、あなたが金銭的な問題を解決し、安定した生活を送ることは、家族や恋人にとってもプラスになることでしょう。
同僚に知られて会社に居づらくなる
これもまた、一般的には誤解です。債務整理を行う事実は、弁護士や司法書士が秘密厳守の義務を持っていますから、その事実が第三者に漏れることはありません。
もちろん、自分からその事実を話すことは自由ですが、弁護士などから情報が漏れる心配は不要です。
借金問題を解決して安定した精神状態で仕事に臨むことは、職場にとってもプラスとなります。
戸籍に記載される
債務整理が戸籍に記載されるという誤解も広く存在します。しかし、これは全くの誤解で、債務整理の事実が戸籍に記載されることはありません。
日本の法律上、債務整理や破産の情報が戸籍に記載されることは一切ありません。したがって、債務整理を行うことで、結婚や就職に影響が出ることはないのです。
債務整理後の生活について
債務整理を終えた後は、再び社会に適応し、新たな生活を始める段階に進みます。
信用情報を回復させる
債務整理を行うと信用情報機関に情報が登録されますが、一定期間が経過すれば自動的に情報は消去されます。そのため、一時的に信用情報が悪化することに怯える必要はありません。
信用情報を回復させるためには、まず適切な金融管理を行うことが重要です。支払いをきちんと行い、新たな借金をしないことが基本です。
不安なら周りの人の理解を得る
債務整理を経験したことで、周囲からの視線が気になるかもしれません。しかし、自分の経験を隠すことなく、逆に共有することも大切です。
自分がどのように借金問題を乗り越えてきたのか、その経験から何を学んだのかを率直に話すことで、理解を得ることができます。
借金問題の再発を防ぐ
債務整理を経験した後は、二度と同じ問題に直面しないように、生活習慣の見直しと、金銭管理に努めることが大切です。
消費者金融やクレジットカードの利用を控えめにするなど意識してください。
家計簿をつける
毎月の収支を家計簿に記録することで、お金の使い道を可視化しましょう。家族みんなで無駄な支出はないか話し合い、節約の工夫を考えることが大切です。
生活費を分けて管理する
生活費と趣味や娯楽費を別にして管理することで、浪費を防げるでしょう。ギャンブルなどの依存症がある場合は、本人が自由に使えるお金を制限することも検討しましょう。
貯蓄の習慣をつける
毎月一定額を貯金に回す習慣をつけましょう。「みんなで旅行に行く」など、家族で貯蓄目標を決めるのもよいでしょう。目的を共有することで、節約の意欲も高まります。
借金の誘惑を避ける
クレジットカードの解約やカードローンの利用限度額の引き下げなど、借金をしにくい環境を整えましょう。ギャンブルの誘惑を避けるため、パチンコ店の前は通らないようにするなどの工夫も必要です。
また、カウンセラーと定期的な面談を続けることも有効です。自身の状況を客観的に見つめ直す機会を持つことができ、必要なサポートやアドバイスを得ることができます。
専門家から一言
まとめ
債務整理を検討しているあなたは、クズではありません。借金によるプレッシャーは、精神的なストレスを引き起こし、生活の質を大幅に低下させます。
債務整理は、法律によって保証された権利であり、借金問題に対処するための有効な手段です。
自分を卑下するのはやめましょう。まずは現状を直視し、専門家に相談して具体的な解決策を探ることから始めてみてください。