債務整理と任意整理の違いとは?メリット・デメリットや任意整理が向いている人を紹介

債務整理と任意整理の違い

この記事では、債務整理と任意整理の違いについて説明します。

結論から言うと、任意整理は債務整理の一種です。

  • 裁判所を通さないため手続きが簡易で迅速
  • 利息制限法に基づき利息を引き直し計算できる場合がある
  • 費用が比較的安価

などの特徴があります。さらに詳しい内容を見ていきましょう。

債務整理と任意整理の違いとは?

任意整理は債務整理の一種

債務整理は、借金問題を解決するための手続きの総称であり、任意整理、個人再生、自己破産などが含まれます。

任意整理はその中の一種であり、裁判所を介さず債権者と直接交渉することで返済条件を見直す方法です。

任意整理とは?

任意整理は、弁護士や司法書士が債権者と直接交渉し、利息のカットや返済期間の延長などを目指す手続きです。裁判所を介さないため「私的整理」とも呼ばれます。

任意整理では財産処分が不要なため、自宅や車などの資産を維持しながら借金問題を解決できます。

元金自体の減額は難しい場合が多いですが、利息制限法に基づく引き直し計算によって返済総額が軽減されることがあります。ただし、債権者の同意が必要であり、必ず減額できるわけではありません。

弁護士や司法書士に依頼すると、「受任通知」が送付され、それ以降は債権者からの取り立てや督促が停止します。これにより、借金問題によるストレスや不安が軽減されます。

任意整理のメリット

任意整理は他の債務整理方法と比べて柔軟性が高く、以下のようなメリットがあります。

費用を抑えて借金を整理できる

任意整理は裁判所を通さないため、個人再生や自己破産に比べて手続き費用が抑えられます。弁護士や司法書士に依頼する場合でも、1社あたり2~5万円程度が相場です。

MEMO

自分で債権者と交渉する場合は専門家への依頼費用が不要です。ただし、交渉を有利に進めるためには専門家のサポートが推奨されます。

返済計画の柔軟性がある

任意整理では、債務者の収入状況に応じた返済計画を立てることができます。返済期間を3~5年程度に延長したり、無理のない月々の支払い額に調整することが可能です。

裁判所を介さないため手続きがスムーズ

任意整理は裁判所を通さず、債権者との合意のみで手続きが完了します。そのため、他の債務整理方法と比べて迅速かつ簡便に進められる点が大きなメリットです。

任意整理のデメリット

任意整理には以下のようなデメリットがあります。

借金の減額幅は債権者次第

任意整理では、債権者との交渉により返済条件を見直しますが、借金の減額幅は債権者の同意に依存します。利息や遅延損害金のカットが主な対象であり、元金の大幅な減額は難しい場合が多いです。

債権者が交渉に応じない場合、減額が実現しないこともあります。

注意

交渉結果は個々の状況や債権者によって異なるため、減額幅にばらつきがあります

信用情報への影響がある

任意整理を行うと、信用情報機関に事故情報として登録されます。この情報は完済後5年間保持され、その間、新規借入やクレジットカード発行が制限されます。

信用情報への影響は避けられない点に注意が必要です。ただし、自己破産や個人再生(7~10年)と比べて登録機関は短いです。

一部の債権者から返済請求が残る場合がある

任意整理では、すべての借入先を対象とする必要はありません。そのため、対象外とした債権者からの返済請求が続く可能性があります。

また、一部の債権者が任意整理に応じない場合、その債務については通常通り返済義務が残ります。

手続きの費用と時間がかかる

弁護士や司法書士に依頼する場合、1社あたり2~5万円程度の費用がかかります。

また、債権者との交渉には時間を要する場合もあり、即時解決は難しいことがあります。ただし、自己破産や個人再生と比べると手続きは簡易です。

他の債務整理との違い

債務整理(任意整理以外)のメリットとデメリット

借金問題を解決するための債務整理には、任意整理以外にも個人再生、自己破産、特定調停といった方法があります。

任意整理は比較的少額の借金や継続的な収入がある場合に適しています。一方、個人再生や自己破産は借金総額が高額で返済困難な場合に有効です。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、自分の状況に合った方法を選ぶことが重要です。

個人再生

メリット

  • 借金総額を大幅に減額(最大で5分の1程度)
  • 住宅ローン特則を利用すれば、自宅を残しながら債務整理が可能
  • 法的手続きにより、強制執行や取り立てが停止される

デメリット

  • 手続きが複雑で時間と費用がかかる(弁護士費用は30~50万円程度)
  • 官報に名前が掲載される
  • 信用情報に事故情報として登録され、約7年間新規借入が制限される

適したケース

  • 借金総額が3,000万円以下で、安定した収入がある場合
  • 自宅や事業を維持しながら債務整理を進めたい場合

自己破産

メリット

  • 裁判所に免責許可が認められれば、借金全額の返済義務が免除される
  • 強制執行や取り立てが停止されるため、経済的再出発が可能

デメリット

  • 財産の処分や職業制限(一部職種)が発生する場合あり
  • 官報に名前が掲載される
  • 信用情報に事故情報として約10年間登録され、新規借入やクレジットカード利用が制限される

適したケース

  • 借金総額が高額で返済の見込みが立たない場合
  • 資産がほとんどなく、再出発を目指す場合

特定調停

メリット

  • 簡易裁判所で調停委員会を介して債権者と話し合い、返済計画の調整が可能
  • 弁護士費用が不要で手続き費用が安価

デメリット

  • 債権者全員との調停が必要で、一部の債権者との調整だけでは成立しない
  • 強制力がないため、債権者の同意が得られなければ不成立となる可能性あり

適したケース

  • 手続き費用を抑えたい場合
  • 比較的小規模な借金問題を抱えている場合
MEMO
特定調停は任意整理と似ていますが裁判所が関与する点が異なります

任意整理ができる人・できない人

任意整理ができる人・できない人

任意整理は借金問題の解決方法の一つですが、誰でも利用できるわけではありません。状況によっては他の債務整理方法を検討する必要があります。

任意整理ができる人の条件

任意整理が可能かどうかは、以下の条件を満たしているかで判断されます。

安定した収入があること

 

任意整理後は3~5年かけて分割返済を行うため、毎月一定額を支払える安定収入が必要です。会社員やアルバイト、年金受給者など、継続的な収入があることが求められます。

返済への強い意欲があること

 

債権者との交渉では、返済継続の意思と誠実さが重要です。これまでに返済実績がある場合、債権者からの信頼を得やすくなります。

借金総額が返済可能な範囲内であること

 

原則として借金総額は年収の3分の1程度が目安です。借金額が多すぎる場合や返済期間内に完済できない場合は、個人再生や自己破産など他の方法を検討する必要があります。

任意整理ができない人の特徴

以下に該当する場合、任意整理は難しい可能性があります。

収入が不安定または無収入

 

自営業者や非正規雇用者で収入に大きな変動がある場合、任意整理後の分割払い継続が困難と判断されることがあります。無職の場合は自己破産など他の方法を検討する必要があります。

過去に返済不履行があった人

 

以前に任意整理を行ったにもかかわらず返済義務を怠った場合、債権者から信頼を得られず交渉が成立しない可能性があります。

財産隠しや虚偽申告の疑いがある人

 

任意整理では債務者の収入や財産状況を基に返済計画を立てます。虚偽申告や財産隠しが発覚した場合、任意整理どころか法的整理も困難になる可能性があります。

借金総額が多すぎる場合

 

借金額が非常に高額であり、3~5年以内に完済する見込みがない場合は、個人再生や自己破産など他の方法を検討する必要があります。

任意整理ができないときの代替手段

任意整理ができないときはどうすればいい?

個人再生を検討する

任意整理ができない場合、個人再生を検討することができます。個人再生は、自己破産と任意整理の中間的な手続きであり、債務整理の中でも比較的軽い手続きです。

個人再生の場合、返済計画を作成し、債権者に提出します。債権者の承認を得れば、債務を減額したり、返済期間を延ばしたりすることができます。

自己破産を検討する

自己破産は裁判所への申し立てによって借金全額の返済義務を免除する制度です。

財産処分や職業制限などのデメリットはありますが、返済不能な状況から抜け出すための最終手段として利用されます。

借金問題を解決するためのステップ

借金問題は一人で抱え込まず、早期に具体的な解決策を探ることが重要です。以下では、借金問題解決のためのステップを説明します。

ステップ①借金の現状を正しく把握する

借金問題を解決するには、まず自分の状況を正確に理解することが不可欠です。以下のポイントを確認しましょう。

借入先と借入額の確認

 

請求書や取引履歴を取り寄せ、借入残高や合計額を正確に把握します。

返済状況のチェック

 

過去の返済履歴や延滞の有無、今後の返済可能性を確認します。

借金の理由の整理

 

借金の背景(浪費癖、病気、失業など)を分析し、再発防止策を検討します。

これらの情報は債務整理や専門家への相談時にも役立ちます。

ステップ②専門家に相談する

借金問題解決には法律知識が必要な場合が多いため、弁護士や司法書士など専門家への相談が推奨されます。

専門家に相談するメリットとして、任意整理、個人再生、自己破産などから最適な方法を提案してもらえます。

また、減額交渉や返済条件調整など個人では難しい交渉も代行してもらえます。複雑な書類作成や裁判所とのやりとりを専門家が代行します。

借金問題は、自分自身や家族との協力によって再スタートが可能です。どんな状況でも適切な対応で改善できます。

まとめ

任意整理は、債務整理の一種です。返済は可能だが月々の返済額が重荷になっている人などに向いています。

債務整理には任意整理のほかに、個人再生や自己破産、特定調整などの手続きがあり、それぞれに特徴があります。

もし任意整理ができない場合は、別の手段で借金問題を解決しましょう。