特定調停では、債務の返済が困難になった場合に裁判官と調停委員が間に入って債権者との交渉や調整を行います。
手続きが簡単で費用が低い、弁護士なしでも手続き可能といった特徴がある一方で、全ての債権者と話し合う必要があり調停不成立の場合もありえます。
この記事では、特定調停のメリット・デメリットや手続きの流れなどをわかりやすく解説します。
目次
特定調停の概要
特定調停とは
特定調停は、返済が困難な債務者(特定債務者)が裁判所の仲介を受けて債権者と話し合い、返済条件を調整する債務整理方法です。
特定債務者には、生活費や医療費で借金が増えた人や事業失敗で返済が難しくなった人が含まれます。個人・法人問わず、法律上の条件を満たせば申し立て可能です。
裁判所は調停委員会を設置し、裁判官や専門家が仲裁役となり話し合いを進めます。合意が成立すると「調停調書」が作成され、判決と同じ法的効力を持ちます。
特定調停に必要な費用
特定調停は、費用が比較的低く抑えられます。
申立費用
特定調停の申し立てには、債権者1社あたり収入印紙代約500円と郵便切手代約420円が必要です。裁判所によって若干異なりますが、全体で数千円から1万円程度が一般的です。
弁護士費用
弁護士を依頼する場合、着手金は1社あたり2万円~5万円程度、減額報酬は減額された金額の10%~20%が相場です。ただし、弁護士を雇わなくても手続き可能です。
特定調停の利用条件
条件①債務整理が必要な状況である
- 金銭債務があり、支払不能に陥るおそれがある
- 債務超過状態にある(負債が資産を上回る)
- 継続的な返済が困難である
条件②取り扱い可能な債務である
特定調停で対象となる債務
- 借入金の返済
- クレジットカードの支払い
- 家賃や光熱費などの生活費
対象外となる債務
- 税金や公共料金の未納
- 養育費など法律上支払い義務のあるもの
- 違法行為による損害賠償請求
条件③債権者との合意が得られる
特定調停は債務者と債権者の合意に基づく手続きであり、債権者全員の同意を得ることが求められます。一部不同意の場合、その債権者には通常通り返済が必要です。
特定調停の成功率
特定調停の成功率は低いとされています。司法統計によると、以下のデータを確認できます。
2017年:申立件数2,423件、成立件数349件(成功率約14%)
令和元年:申立件数2,989件、成立件数534件(成功率約17.86%)
令和2年:申立件数2,423件、成立件数349件(成功率約14.40%)
成功率を上げる方法
特定調停の成功率を高めるためには以下のポイントが重要です。
事前準備を徹底する
財務状況や返済能力を正確に把握し、債権者に提示することで信頼を得やすくなります。
現実的な返済計画を立てる
無理のない返済額と期間を設定し、債権者に納得してもらうことが重要です。
専門家に相談する
弁護士や司法書士などの専門家のサポートを受けることで、交渉がスムーズに進み、有利な条件を引き出せる可能性が高まります。
債権者と事前交渉する
調停前に債権者と話し合い、調停への協力を確認しておくことで成立可能性が向上します。
特定調停は自分で手続きできるのか
特定調停は弁護士や司法書士を介さず、自分で申し立てや書類作成が可能です。必要書類(申立書、財産目録、収支計算書など)は裁判所窓口で入手でき、記入方法も窓口で相談できます。
ただし書類作成や裁判所への出廷など、自分で手続きすると手間と時間がかかる点はデメリットです。債権者との交渉や調停委員の提案内容を理解し、不利な条件を避けるためには慎重な対応が必要です。
法律知識がなくても進められる?
調停委員が仲介役となり、債務者をサポートしてくれます。書類作成や交渉に不安がある場合でも、裁判所の書記官や調停委員からアドバイスを受けられるため、法律に詳しくない人でも進められます。
交渉力に不安がある場合は、弁護士や司法書士に相談しましょう。専門家を介した任意整理など他の債務整理方法も選択肢として検討できます。
特定調停が難しい場合の代替案
特定調停は費用が低額で自力で手続きできる点が魅力ですが、時間や手間がかかるため、他の債務整理方法を検討することも有効です。
任意整理
裁判所を介さず、債権者と直接交渉して利息カットや返済条件を緩和する方法
- 特徴:手続きが比較的簡単で迅速。弁護士や司法書士に依頼することで取り立てが即停止。
- 注意点:債権者の同意が必要で、元本の減額は基本的に期待できない。
個人再生
裁判所の認可を得て借金を大幅に減額し、原則3~5年で分割返済する方法
- 特徴:元本の大幅な減額が可能。住宅ローン特則により自宅を残せる場合がある。
- 注意点:官報に掲載される。安定した収入が必要。
自己破産
裁判所の許可を得て借金を全額免除する方法
- 特徴:借金から完全に解放される。
- 注意点:財産が処分される可能性がある。官報掲載や信用情報への影響が大きい。
過払い金請求
過去に払いすぎた利息(過払い金)を取り戻す手続き
- 特徴:過払い金があれば返還され、借金総額が減少またはゼロになる可能性もある。
- 注意点:過払い金が発生していない場合は適用不可。計算や交渉に時間がかかることもある。
特定調停のメリット
- 債務を減額できる場合がある
- 返済期間を長くすることができる場合がある
- 弁護士なしでも申し立て可能である
債務の減額が可能
特定調停では、利息制限法に基づく引き直し計算や将来利息のカットにより、元本や利息の減額が期待できます。
ただし、大幅な減額は稀であり、交渉次第です。
返済期間の延長が可能
債権者との合意により、返済期間を3~5年程度に延ばし、月々の返済負担を軽減できます。
弁護士なしで手続き可能
特定調停は弁護士を依頼せずに自分で申し立て可能です。費用は印紙代や切手代のみで済むため、他の債務整理より安価です。ただし、書類作成や交渉には一定の知識と手間が必要です。
特定調停のデメリット
- 債権者全員の同意が必要である
- 一部の債務(税金や公共料金など)は対象外である
- 信用情報機関に登録され、新たな借入れが困難になる
- 書類作成や交渉・調整に時間や労力がかかる
債権者全員の同意が必要
特定調停では、すべての債権者から同意を得る必要があります。一部不同意の場合、その債権者には通常通り返済が求められます。
また、債権者から回答がない場合は不同意とみなされることがあります。
一部の債務は対象外
税金や公共料金、国民健康保険料などの公的債務や養育費などは特定調停の対象外です。
これらは減額や免除ができず、滞納すれば差し押さえなどの強制執行を受ける可能性があります。
信用情報への影響がある
特定調停を行うと、信用情報機関に事故情報として登録されます。この情報は完済後5年程度保持され、新たな借入れやクレジットカード利用が困難になります。
なお、自己破産よりは登録機関が短いです。
手続きに時間と労力がかかる
書類作成や債権者との交渉を自分で行う必要があり、専門知識も求められます。
調停成立までには通常3~6ヶ月程度かかり、複雑な案件ではさらに時間がかかる場合もあります。また、裁判所への出頭などで交通費や時間的負担も発生します。
特定調停の手続きの流れ
- 特定調停に必要な書類の作成・簡易裁判所への申し立て
- 申し立て受理後、1回目の調停期日に出廷
- 2回目の調停期日に出廷・債権者との交渉
- 特定調停成立または調停に代わる決定・調停調書作成
【ステップ1】必要書類の作成と申し立て
債務者は「特定調停申立書」「財産目録」「収支計算書」「権利関係者一覧表」などを作成し、債権者の所在地を管轄する簡易裁判所に提出します。
申立手数料(収入印紙)と予納郵便切手が必要で、費用は債権者1社あたり約1,000円程度です。
書類は裁判所窓口で入手可能で、不明点は窓口で質問できます。
【ステップ2】1回目の調停期日に出廷
申立て後、裁判所から調停期日の通知が届きます(通常2~3週間後)。
調停委員(弁護士や司法書士)が債務者の状況を確認し、解決方法を提案します。債権者は出席せず、債務者が調停委員と話し合います。
【ステップ3】2回目の調停期日に出廷
債権者も出席し、返済条件について直接交渉します。
調停委員が仲介し、双方が合意に至れば特定調停が成立します。合意に至らない場合、裁判所が「調停に代わる決定」を行うこともあります。
【ステップ4】調停成立または調停に代わる決定
合意内容は「調停調書」に記載され、法的効力を持ちます。
調停に代わる決定の場合、裁判所が返済条件を決定し、それに従う必要があります。
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まとめ
特定調停は、債務整理の手続きの一つであり、一定の条件を満たす必要があります。
手続きの流れには、申し立て→1回目の調停→2回目の調停→特定調停成立というステップがあります。
調停期日に出廷する際は債務者自身が主張を行う必要があるため、不安なら専門的な知識を持つ弁護士に相談して下さい。スムーズに交渉を進めることができます。