特定調停とは、簡易裁判所で行われる債務整理の手続きです。債務の返済が困難になった場合に、裁判官と調停委員が間に入って、債権者との交渉や調整を行います。
この記事では、特定調停のメリット・デメリットや手続きの流れをわかりやすく解説します。
目次
特定調停とは?
特定調停とは、お金の借り入れや支払いに困っている人(特定債務者)が、裁判所の手伝いを受けて、お金を貸してくれた人や会社(債権者)と話し合って、返済方法や条件を変えてもらうことです。
特定債務者とは、生活費や医療費などで借金が増えてしまった人や、事業に失敗して借金が返せなくなった人など、お金の返済が難しくなっている人です。
法律上の条件を満たせば、個人でも法人でも特定調停を申し立てることができます。
裁判所は特定調停委員という専門家を選んで、特定債務者と債権者の間に入って仲裁します。話し合いによって双方が納得したら、裁判所はその内容を決めます。
この決めた内容(調停決定)は法的に強制力があります。つまり、債権者はその内容に従わなければなりません。
特定調停のメリットは、個人再生や自己破産と比べて手続きが簡単で早く終わることです。また、手数料や弁護士費用も少なく済む場合があります。
しかし、デメリットもあります。例えば、全ての債権者と話し合わなければならないことや、信用情報に影響することです。
特定調停の4つのメリット
債務に悩む人にとって、特定調停は有効な手続きの一つです。
特定調停とは、簡易裁判所で行われる債務整理の手続きで、裁判官と調停委員が間に入って、債権者との交渉や調整を行います。この手続きには、以下のようなメリットがあります。
- 債務を大幅に減額することができる場合がある
- 返済期間を長くすることができる場合がある
- 個人再生や自己破産よりも信用情報への影響が少ない(JICCへ3年間登録されるだけ)
- 弁護士なしでも申し立て可能である(ただし専門知識や交渉力が必要)
債務を大幅に減額することができる場合がある
特定調停では、債権者との合意によって、債務の元本や利息を大幅に減額することができる場合があります。
例えば、100万円の借金を50万円に減らすことや、利息をカットすることなどが可能です。これにより、返済負担を軽減することができます。
返済期間を長くすることができる場合がある
特定調停では、債権者との合意によって、返済期間を長くすることもできます。例えば、10年かかる返済を20年に延ばすことや、月々の返済額を下げることなどが可能です。
これにより、生活費や必要経費などに充てる余裕が生まれます。
個人再生や自己破産よりも信用情報への影響が少ない(JICCへ3年間登録されるだけ)
特定調停では、個人再生や自己破産よりも信用情報への影響が少ないです。
個人再生や自己破産では、信用情報機関(CIC)や日本信用情報機構(JICC)などに5年から10年間登録されてしまい、新たな借入れやクレジットカードの利用などが困難になります。
しかし特定調停では、JICCへ3年間登録されるだけであり、CICへは登録されません。またJICCからも削除されれば新たな借入れやクレジットカードの利用も可能です。
弁護士なしでも申し立て可能である(ただし専門知識や交渉力が必要)
特定調停では弁護士なしでも申し立て可能です。弁護士委任時は弁護士費用もかかりますし、弁護士不在時は、裁判所から無料相談員等も紹介してくれます。
しかし、弁護士不在時は、自分で書類作成や交渉・提案等を行わなければいけません。そのため、専門知識や交渉力等も必要です。
特定調停の4つのデメリット
特定調停には、自分で行うため他の費用を抑えられる、利息のカットや元本の減額が可能³などのメリットがありますが、一方でデメリットもあります。
ここでは、特定調停のデメリットについて詳しく見ていきましょう。
- 債権者全員の同意が必要である
- 一部の債務(税金や公共料金など)は対象外である
- 調停決定後にJICCに登録され、新たな借入れが困難になる
- 書類作成や交渉・調整に時間や労力がかかる
債権者全員の同意が必要である
特定調停では、債権者全員から同意を得る必要があります。 一部不同意でも成立する場合もありますが、その場合は不同意した債権者に対しては元通り返済しなければなりません。
また、債権者から回答がない場合は不同意とみなされます。
一部の債務(税金や公共料金など)は対象外である
特定調停では、税金や公共料金、国民健康保険料などの公的債務や養育費などの民事法律上の義務は対象外です。
これらの債務については特定調停では減額できませんし、滞納すると差し押さえや免許取消しなどの強制執行を受ける可能性があります。
調停決定後にJICCに登録され、新たな借入れが困難になる
特定調停を申し立てると、信用情報機関であるJICC(日本信用情報センター)に事故情報が登録されます。この登録は調停決定後から3年間維持されます。
この期間中は新たな借入れやクレジットカードの利用が困難になりますし、住宅ローンや車ローンも組めません。
書類作成や交渉・調整に時間や労力がかかる
特定調停では、自分で書類作成や交渉・調整を行わなければなりません。
これらの作業は非常に時間や労力がかかりますし、専門的な知識も必要です。弁護士委任時も含めて平均6ヶ月程度かかります。
また、裁判所へ何度も足を運ばなければならず交通費もかさみます。
特定調停に必要な費用
特定調停は、債務者と債権者の合意に基づいて債務整理を進める手続きであり、費用も比較的低く抑えられています。以下では、特定調停の費用について詳しく説明します。
申立費用
特定調停の手続きを開始するには、まず簡易裁判所に申し立てを行う必要があります。この際に申し立て費用が必要になりますが、2023年2月現在、申し立て費用は1件につき22,000円です。
調停委員費用
特定調停の手続きには、調停委員と呼ばれる第三者が介入して、債務者と債権者の交渉を支援します。この調停委員に支払う費用は、債務者と債権者で折半することになります。
調停委員費用は、調停委員の労務費によって算定されますが、一般的には数万円程度となります。
弁護士費用
特定調停の手続きには、弁護士を雇うことができますが、弁護士費用は債務者が全額負担することになります。
弁護士費用は、債務者と弁護士の契約内容によって異なりますが、相場としては数十万円から数百万円程度となります。
以上が、特定調停の費用についての概要です。特定調停は、債務整理手続きの中でも費用が比較的安く抑えられている手続きですが、費用が掛かる場合もあります。
債務者は、事前に費用の見積もりを行い、負担できる範囲内で手続きを進めることが大切です。
特定調停を利用するための条件
特定調停は、債務者が自己破産や任意整理などの債務整理手続きを行わずに、債務整理を進めるための手続きです。以下では、特定調停を利用するための条件について詳しく説明します。
債務整理が必要な条件
特定調停を利用するには、債務整理が必要な条件があります。具体的には、次のような状況が該当します。
- 債務超過状態にあること
- 返済能力がないこと
- 金融機関やクレジットカード会社などからの催促や督促が届いていること
- 自己破産や任意整理などの手続きが適用できない場合
受け入れ条件
特定調停は、債務者と債権者の合意に基づく債務整理手続きであり、そのためには債権者側の合意が必要です。
具体的には、債務者が債務整理を行うことで、債権者に与える損失が、特定調停によって債権者に与えられる損失よりも少ないことが必要です。
受け入れ範囲
特定調停で取り扱うことができる債務は、次のようなものがあります。
- 借入金の返済
- クレジットカードの支払い
- 家賃や光熱費などの家計支出
- 生活費など
また、特定調停で取り扱うことができない債務もあります。具体的には、次のようなものが該当します。
- 税金や公共料金の未納
- 法律上支払い義務のない債務
- 違法行為によって生じた損害賠償請求
以上が、特定調停を利用するための条件についての概要です。
特定調停の手続きの流れ
特定調停は、債務者と債権者が直接交渉することで、円満に債務整理を進めることができる手続きです。ただし、債務者には誠意を持って交渉することが求められます。
詳しくは以下の流れに沿って手続きを行います。
- 特定調停に必要な書類の作成・簡易裁判所への申し立て
- 申し立て受理後、1回目の調停期日に出廷
- 2回目の調停期日に出廷・債権者との交渉
- 特定調停成立または調停に代わる決定・調停調書作成
【ステップ1】特定調停に必要な書類の作成・簡易裁判所への申し立て
まず、特定調停に必要な書類を作成します。これには、特定調停申立書、財産目録、収支計算書などが含まれます。
特定調停申立書は、簡易裁判所に提出するもので、債務者や債権者が作成することができます。
申立書には、支払い不能状態にあること、債務整理を行うことを希望していること、債権者との交渉に失敗したことなどが記載されます。
申立書に必要な書類は、簡易裁判所のウェブサイトからダウンロードすることができます。
【ステップ2】申し立て受理後、1回目の調停期日に出廷
簡易裁判所に申し立てが受理されると、1回目の調停期日が指定されます。調停期日は、原則として申立書の提出から約1か月後に設定されます。
調停期日には、債務者、債権者、調停委員が出席します。調停委員は、簡易裁判所が任命した弁護士や司法書士です。
調停委員は、債務者や債権者の話を聞き、債務整理のための最適な方法を提案します。
【ステップ3】2回目の調停期日に出廷・債権者との交渉
1回目の調停期日で合意が成立しなかった場合、2回目の調停期日が設定されます。2回目の調停期日では、債務者と債権者が交渉を行い、最終的な合意がなされます。
調停委員が債務者と債権者の話し合いを仲介します。債権者との交渉で合意が成立すれば、特定調停が成立します。合意が成立しなかった場合は、調停に代わる決定が出されます。
【ステップ4】特定調停成立または調停に代わる決定・調停調書作成
債務者と債権者が合意した場合は、特定調停が成立します。調停委員が、債務者と債権者の合意内容をまとめた「調停調書」を作成します。
調停調書には、債務者の債務整理方法、債務者が支払う金額や期間などが記載されます。調停調書は、簡易裁判所に提出され、債務整理手続きが終了します。
もし債権者との交渉で合意が成立しなかった場合、調停に代わる決定が出されます。調停に代わる決定とは、簡易裁判所が債務者の債務整理方法を決定するものです。
調停に代わる決定が出された場合は、債務者はその決定に従う必要があります。
以上が、特定調停の手続きの流れになります。
特定調停の成功率はどれくらい?
特定調停の成功率は低いと言われています。司法統計によると、2017年の特定調停の申立て件数は2,423件で、成立件数は349件でした。つまり、成功率は約14%です。
他のサイトでは、成功率は3%という数字も見られます。特定調停は債権者との合意が必要なため、成立しにくい場合が多いです。
成功率を上げる方法はある?
特定調停の成功率は、残念ながら高くありません。特定調停の申立件数は2003年をピークに減少し続けています。
原因は、債権者が非協力的など、調停が成立しない場合が多いことです。
特定調停の成功率を高める方法としては、以下のようなことが挙げられます。
- 債権者と事前に話し合って、調停に応じるかどうかを確認する
- 財産状況や返済能力を正確に把握し、債権者に提示する
- 返済計画を現実的かつ合理的に立てる
- 司法書士や弁護士などの専門家に相談する
特定調停は本当に自分で手続きできる?
特定調停は、債務整理手続きの中でも相対的に手軽な手続きであり、債務者自身が手続きを行うことができます。
しかし、特定調停は法律手続きであり、手続きの過程や内容には法的な専門知識が必要とされます。
特定調停は、簡易裁判所で行われる手続きであり、調停委員と呼ばれる裁判官や弁護士が債務者と債権者の調停を行います。
債務者自身が直接調停委員に対して主張を行う必要があり、調停において法律的な知識が必要となります。
特に、債務整理に関する法律の知識がない場合、自分で手続きを進めることは非常に困難であるといえます。
したがって、特定調停においては、専門的な知識を持つ弁護士に相談することが望ましいとされています。
弁護士は、債務整理に関する法的な知識を持っており、債務者の利益を最大限に考慮しながら、調停委員と債権者との交渉を行うことができます。
弁護士に相談することで、手続きの進め方や交渉のポイントなどを的確に把握することができ、債務整理手続きをスムーズに進めることができるでしょう。
特定調停の手続きが難しい場合の代替案
特定調停は自力で手続きできて費用が低額で済むことが魅力ですが、仕事が忙しい人や過払い金が見込める人などは、他の債務整理方法も検討してみると良いでしょう。
債務整理には、主に以下の4種類があります。
- 任意整理:裁判所を介さずに債権者と直接交渉して、返済金額や回数を減らす方法です。費用が安くて手続きが早いですが、強制力がなくて債権者の同意が必要です。
- 個人再生:裁判所の認可を得て、借金を大幅に減額する方法です。住宅ローンなども含めることができますが、官報に掲載されたり、条件を満たす必要があります。
- 自己破産:裁判所の許可を得て、借金をゼロにする方法です。借金から完全に解放されますが、ブラックリストに登録されたり、財産を失ったりする可能性があります。
- 過払い金請求:過去に支払った利息のうち、法律で定められた上限額を超えた部分(過払い金)を取り戻す方法です。過払い金があれば返還してもらえますが、計算や交渉が複雑で時間がかかる場合もあります。
どの債務整理方法もメリットとデメリットがあります。自分の状況や目的に合わせて選ぶことが大切です。
債務整理の無料相談ができる法律事務所3選【特定調停以外の手段も相談OK】
特定調停は専門的な知識が必要となるため、自分で手続きを行うのは難しいです。そのため、弁護士へ相談することが重要となります。
気になる相談料ですが無料です。その後、有料で債務整理の依頼を行うかは相談をした後に決めればよいでしょう。
なお、ここで紹介する法律事務所はすべて全国対応です。
サンク総合法律事務所
内容 | 費用 |
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相談料 | 無料(フリーダイヤル) |
任意整理 |
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過払い金請求 |
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自己破産 | 公式HPには明記なし |
個人再生 | 公式HPには明記なし |
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また、交通事故や労働問題などのトラブルにも対応しており、多岐にわたる法的な問題に対して解決策を提供しています。
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緊急時には24時間対応の「救急電話窓口」も設置されており、いつでも安心して相談することができます。
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弁護士法人響
内容 | 費用(税込) |
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法律相談 | 0円 |
任意整理 |
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個人再生 |
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自己破産 |
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完済過払い |
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アヴァンス法務事務所
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自己破産 | 着手金352,000円 予納金、申立印紙代などの実費40,000円 債権者が10社を超える場合は別途見積もり 管財事件の場合には管財人選任のための費用が別途必要 |
時効援用 | 着手金44,000円 減額報酬11% |
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まとめ
特定調停は、債務整理の手続きの一つであり、債務整理を行うためには、一定の条件を満たす必要があります。
特定調停を利用する場合、自分自身で手続きを進めることも可能ですが、法律的な知識が必要とされるため、専門家の弁護士に相談することが望ましいとされています。
特定調停の手続きの流れには、申し立て、1回目の調停期日、2回目の調停期日、特定調停成立または調停に代わる決定、調停調書作成というステップがあります。
特に、調停期日では債務者自身が主張を行う必要があり、専門的な知識を持つ弁護士に相談することで、スムーズに交渉を進めることができます。
特定調停にかかる費用には、調停費用や弁護士費用がありますが、一定の条件を満たす場合は、弁護士費用を国から補助する制度もあります。
また、特定調停には債務者の利益を最大限に考慮した手続きが行われるため、債務者が借金問題を解決するための選択肢の一つとして考えることができます。
特定調停については、借金問題に悩む人々にとって、知っておくべきことが多くあります。
手続きや条件に関する知識だけでなく、自分自身の状況に合わせて最適な解決方法を見つけることが大切です。
弁護士や専門家に相談することで、より正確かつ具体的なアドバイスを受けながら、自分自身の問題を解決する手助けとなるでしょう。